情報の結びつきに注意!
■マニュアル営業刑事
営業マン:「○○さまは、資金についてお考えになったことはございますか?」
ご主人 :「いや、まだ具体的には・・」
営業マン:「そうですか、総額でどのくらいの計画が可能なのか、おおよそのご予算を把握されることは非常に重要です。ちなみに今のアパートのお家賃は、おいくらぐらい支払われていますか?」
ご主人 :「えっ? 8万だけど・・」
営業マン:「8万円ですか、そうしますと、月々のご返済もそのくらいをお考えですか?」
ご主人 :「いや、まだわかんないよ・・・」
営業マン:「だいたいで構わないんですよ、どのくらいをお考えかをお教えいただければ、簡単に計算できますので。ボーナス返済なんかは・・」
ご主人 :「だからまだわからんって!その時になったらおたくにも話するから(怒)」
■サイバー刑事
営業マン:「こちらにございますのが、マイホームナビというもので、住まいづくりをお考えのお客様の強~いお見方なんです。ちょっと触ってみませんか?」
ご主人 :「・・・なんやおもろいやんけ、へぇーすごいなぁ~」
お子様 :「なんや父さん、なぁーどうやるん?」
ご主人 :「ちょっと待てや! そなやったら壊れちまうで!」
営業マン:「大丈夫ですよ、やってみてください。お時間があるようでしたら、いろいろメニューもございますから。例えばこちらでは、簡単にこの場で資金計画が出来て、プリントアウトしてお持ち帰りも出来たりするんですよ!」
ご主人 :「そりゃすごいなぁ~、おい!ちょっといじってみい!」
お子様 :「おぉ!」
ご主人 :「なんや月々の返済かぁ・・・ほいなら、8いうところ押してみぃー!」
お子様 :「これかぁ?」
あるサイトで、柴咲コウのCDの検索をしたら、次の日から柴咲コウの着メロ案内のメールが頻繁に来るようになった・・なんてことありませんか?
これ、わたしの話なんですが、これこそサイバー刑事の仕業です。
前回登場したサイバー刑事(デカ)! 最近ではみなさんのまわりのいたる所に出没し、尾行を続けています。
冒頭の会話、前者がマニュアルどおりのトークで、事情聴取をしそこねた人間刑事、後者が、いとも簡単に事情聴取と思わせずに勝手に吐かせているサイバー刑事です。
かれこれ10年くらい前から一般的になってきたこのサイバー刑事、頭がいいこと以上に、犯人(お客様)の気をゆるめさせるという、最高の腕をもった刑事なのです。
前回お話したような、まわりくどいあの手この手の手法を使わなくても、このサイバー刑事は、いとも簡単に情報を集めます。その上、人間じゃとても把握できないような連係プレーを見せつけます。
例えばこのケース、常日頃、慣れ親しんできたパソコンというモノと、面白そうなソフトが、お客様から警戒心を取り払います。そして、人間からの質問には用心する方も、ソフトタッチの画面での質問には、スラスラ答えていってしまうのです。そこには営業マンの影はありませんから、完全にお客様個人の世界で楽しんでしまうのです。
冒頭のケースは序の口です。現在では、あらゆる情報が連携しています。みなさんがお持ちのパソコンには個々にそれぞれ識別可能なアドレスがついています。ある時、資料請求で、お名前、住所、年齢・・と個人情報を入力したとたん、その情報はさまざまな情報とつながりだします。
いつどのようなデバイスでホームページを見に来たか、どのページをどのくらい見ていたか、そして今回のようなシミュレーション的な仕掛けでさらに詳しい個人情報を集め結びつけていきます。
「ライフシミュレーションをしてみませんか?」「かんたん資金計画!」「住宅人気投票!」・・など、その手口は数えきれません。
あらゆる情報が連鎖し、その結果ある日営業マンの手元に届く資料には、○○さんは、ホームページを見る頻度が上がってきているので、気持ちが高ぶりだしている・・・とか、三階建てのこの商品を中心に見ており、特に設備のページをじっくりとみている・・とか、自己資金は800万円で、家族は5人、子供は5歳・・と、会ったこともない営業マンがあらゆる情報を握ってしまうのです。
当然ピントの外れた営業をするわけも無く、会ったその日からお客様が興味があること、不安に思っていることに的確に回答し、手際よく商談をすすめていきます。
このことは決してお客様にとって悪いことではありませんが、あなたが何も知らずにいたとしたならば、思わぬ誤解を招くかもしれません。
この営業マンは素晴らしい!センスがある!お客のことをよく分かっている・・・などと。そんな気持ちでいては、この業者の思うツボです。
今日の教えは、そんなあなたのために…
今日の教え
★情報の独り歩き、結びつきに要注意!
スマホやパソコンを使いネット上で情報収集をすることは、同じ分だけ欲しい情報を与えていると思ってください!
情報収集の便利さは、実はお客様にも営業マンにも平等?に与えられているということを認識してください。
一度データベースに載ったら、すべてが紐づけられてしまうということを認識してください!
個人情報保護法ができ、情報の利用に一定の制限がかけられ、情報漏洩についてもいろいろ問題になっていますが、グレーな部分はずーっと変わらないということです。
みなさんが大方読まずにクリックする規約には、「ここで得た個人情報は、○○についてその利用を認める…」などの条項が入っていたりします。
ましてお客様が巧みな利用法に気付かないのであれば、それは全く問題になりえないのです。
でも、IT化が進み様々な情報収集が進んだことで、逆にわからなくなってきた情報もあるんです。それは、筆跡や声といったアナログ情報です。
★同じ言葉でも、どういう風に書かれたものか?
★同じ言葉でも、どういう風に発せられたのか?
これは非常に大事な情報なんです。殴り書きか、子供っぽい字か…などの筆跡は、その人の性格や気持ちを表します。口調も一緒です。
昔は資料請求のはがきの筆跡を見て、そのお客様の人格や購買意欲を推測しながら訪問したものでした。端末による文字入力データでは、こういう楽しみもなくなりました。
それと同時に、匂いを嗅ぎつける刑事(営業マン)も減ってきています。
どうですか? 少しはお役にたちましたか?では、次のお話へ!
★「サイバー刑事」にも注意しよう!
刑事は人間だけではありません。最近では「サイバー刑事」が主流です。
人間がやらなくても、ネットを通じていろんな個人情報を集め、それがさまざまな形で加工され、営業マンのもとに届けられます。
住宅メーカーのアンケートには答えていなくても、懸賞アンケートに応えている方、応募時にその名簿の利用先をチェックしていますか? 宅メーカーがタイアップしていたりしませんか?
また金融機関のアンケートだから安心!なんて思っていませんか?
AIの進化とともに、チャットでの質問などが増え便利になっていますが、すべて情報として残ることを意識して下さい。
これらが厄介なのは、人間に対しては警戒する人たちも、自分のスマホやパソコン画面に対しては、不用意だということです。
あなたがスマホやパソコンで情報が集められ便利になったと感じているのと同様に、営業マンも集めやすくなっているのです。
そうそうPepper ペッパーくんにも注意です!(笑)
『営業のプロ』の教え:第9話
☞ Coming soon!
※プロローグでお断りさせて頂きましたが、現在では女性蔑視・差別表現とされている「ご主人」「旦那」「奥様」という呼称が登場しています。ジェンダー・ニュートラルな「パートナー」や「つれあい」という言葉では文脈上誰を指すのかわかりにくく、また公的な場で「夫」「妻」を他人が呼ぶ呼称が未だ定着していないことから、便宜上「ご主人」「旦那」「奥様」という呼称を使用しています。
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