坪単価は、水回りと外周がツボ?

住まいづくり『プロと博士の教え』 第2話

住まいづくり『プロと博士の教え』

~『間取りの博士』の教え ~

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坪単価は、水回りと外周がツボ?

さて第二弾となる今日は、前回に続き「坪単価」に潜む謎についてお話します。

今回はさらに深掘りをして、「水回り」と「外周」から、坪単価の謎に迫ってみます。



「水回り」の設備に注意!

前回のお話の中で、キッチンやお風呂などの水回り設備のことが出てきましたよね。これって住まいづくりの坪単価にとって、非常に大切なポイントなんです。

ごくごく一般的なI型(まっすぐの)のシステムキッチン。シンクも大きく、ハンドシャワー水栓に食洗器なんかも付いちゃって、40万円のものがありました。

かたや見た目の機能は変わらないのですが、面材やトップの素材が良くて120万円するキッチンがありました。

みなさんはこの2つのキッチンを比べる時、目の前のキッチンだけに目が行き、キッチンの値段だけを比べて考えていませんか?

「こっちの方が良いんだけど、80万も高いのかぁ~」…なんて。

「えっ?」

いきなり言われても、これだけの説明では、何が言いたいのかわからないですよね。もう少しわかりやすく説明していきましょう。



仮にあなたが買おうとしている家の大きさが40坪だとします。前者のシズテムキッチンは、40万円÷40坪=坪1万円、後者は120万円÷40坪=坪3万円となります。

そうなんです、キッチンだけで住宅の坪単価が2万円もアップしたことになっちゃうんです。

同様にお風呂やトイレ・洗面台と、水回りの設備は結構一つ一つの単価が高いので、すぐに坪単価を押し上げてしまうんです。

契約後の仕様打合わせなどで、ちょっとの変更のつもりが、ちりも積もれば…となり、当初の「坪○万円~」のチラシは何処へやら…ってな感じで、気がついたら驚くような坪単価の家になっていたりしちゃうんです。誰でも良いものを見せられれば、気持ちが動きますからね。

ましてや営業マンやコーディネーターに、「設備は後で代えるのは大変ですよ!」とか、「一生に一度の買い物ですから、後悔の無いように…」なんて言われちゃうと、ついつい変更したくなってしまうものなんです。

こちらの方は『営業のプロ』のお話の領域ですが、「水回り設備を使うのは毎日のことですから、せっかくの夢のマイホームなのに、ちょっとしたことでその後の生活・人生までが大きく変わっちゃいますよ! 気になり出したら毎日見る度に気になるわけで、あぁ~あの時ケチらなければ…ってね。それがずーっと何年も続くわけですから…」なんて営業トークは、特にお客様の心に刺さるもので…。是非とも動揺せずに正しい判断を!

それはさて置き、水回りの設備が惑わせ「坪単価」を分からなくするカラクリについての理解は、少しは進みましたか?



「外周」に潜むトリック!

ではもう一つ、今度は「外周」についてのお話です。

みなさんはチラシに掲載されているモデルハウスと同じ床面積で、同じ商品名、すべて同じ材料、同じ設備の家が、みんな同じ値段になると思っていませんか?

チラシの家が40坪1500万円なので、自分も同仕様で40坪だから1500万円で家が建てられる…、なんて単純に考えていませんか?

ここにも大きな落とし穴があるとともに、逆に価格を抑えるヒントが隠されているんです。

わかりやす~く極端な例で説明して行きますね。



建物の間口と奥行きが、2m×50mの家があったとします。その大きさ(床面積)は、2×50=100㎡ですよね。

一方間口と奥行きが、10m×10mの家があったとします。こちらも10×10で同じ100㎡ですよね。

でもそれぞれの建物の「外周」を考えてみると、前者が2+50+2+50=102mなのに対して、後者は10×4=40mしかありません。その差は実に62mもあり、後者の家は前者の半分以下となっています。

「うん?」

いいですか、もう一度言いますよ。

同じ床面積100㎡(約30坪)の家ながら、外周には2倍以上の差があることになります。

つまり、家の「床面積」が同じこと ⇒ 「外周」も同じ! にはならないんです。いろんなカタチの家がありますからね。

「そんなの当たり前じゃん!」

ってお思いの方でも、2倍以上も違うことがあるという認識をお持ちでしたか? 別に多少の違いがどうなの?ってな感覚ではなかったですか?

実はこの「外周」の違いが、家づくりにとっては大きな大きな差となって表れてくるんです。基礎の長さや外壁材などの見積りは、この「外周」の長さで大きく左右されてしまうんです。

外周が伸びれば、実際に材料が多く必要になるわけで、当然見積りもその分あがります。特に外壁材は、単価そのものが高いので、坪単価を大きく押し上げてしまうんです。

仮に、見積りが㎡による面積ではなく外周の長さによるm計算だとしたら、単価1万円/mだとすると、その差は62万円になってしまいます。

これを床面積の100㎡(約30坪)で割ると、坪単価が2万円以上アップすることになります。

お分かり頂けましたか?



正方形の総二階建て住宅が多い訳!

外周が坪単価を押し上げ悪さをするお話をしてきましたが、悪い話ばかりではありません。

逆にお客様の限られた予算の中で、最大限効率の良い家を考える場合には、これが重要なポイントとなるんです。

ここで、ピン!ときた方も多いのでは?

「そう言えば、あのチラシの家のカタチ…、そうだったのかぁ~ナルホドね!」とね。

よく言われることですが、工業化住宅の商品に多く見られるのが、正方形の総二階建て住宅です。計算上では、同じ床面積なら一番コストがかからないわけで、価格を抑えるにはもってこいなのです。

家のカタチで言えば、同じ坪数でも総二階の家と下屋付きの家とでは、当然前者の方が「外周」が短く安上がりです。□の家と凹のある家とでも同じことが言えます。

そしてもう一つ、「屋根」の大きさも、総二階なら二階部分しか屋根がないのですから、当然余計なコストもかかりませんよね。一階部分はすべて二階の屋根の下に隠れるわけですから。

さらに、二階部分の居室の天井を「勾配天井」(屋根の形に沿って天井が斜めになっていたりするもの)にして、窓際の外周壁の天井高を低く抑えたりすれば、さらに外壁材の使用量が抑えられ、安くできちゃったりするわけです。

わたくしマードリーも、幾度と無くこの勾配天井のマジック!?にはお世話になりました。

こういうことを考えて設計するのは、みなさんの予算を最大限活用すべくアイデアを絞っているわけなんですが、少しは設計する側の苦労もご理解いただけたかと…

もう、トクトクハウスの総二階建ての家のチラシの坪単価を見て、自分の夢の下屋付き狭小住宅の家の値段を胸算用するなんてことは、やめてくださいね!



どうですか、少しは坪単価のカラクリについてわかって頂けましたか? もうそろそろ「坪いくら主義」からは脱皮して頂さいね!

次回は、「人的かつ巧妙な坪単価の操作」についてお話します。あなたの懐具合をみたり、競合相手とのせめぎ合いの中から生まれる、営業マンの超ウルトラCのテクニックです。

決して業者の方もウソをついている訳ではないのですが、素人にはわかりにくいため錯覚をしてしまう「坪単価の謎」のお話です。


『間取りの博士』の教え:第3話
 ☞ 謎を生む、本体価格と床面積!


※プロローグでお断りさせて頂きましたが、現在では女性蔑視・差別表現とされている「ご主人」「旦那」「奥様」という呼称が登場しています。ジェンダー・ニュートラルな「パートナー」や「つれあい」という言葉では文脈上誰を指すのかわかりにくく、また公的な場で「夫」「妻」を他人が呼ぶ呼称が未だ定着していないことから、便宜上「ご主人」「旦那」「奥様」という呼称を使用しています。


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