そんな「ヒアリング」で大丈夫?

住まいづくり『プロと博士の教え』 第5話

住まいづくり『プロと博士の教え』

~『間取りの博士』の教え ~

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そんな「ヒアリング」で大丈夫?

今回は、ちょっと短めにいきたいと思いますね。毎回長いと疲れちゃいますからね。

さて今回も前回に続き、「自分たちの」要望をどう伝えるべきか? どうまとめていくべきか? についてお話します。



「ヒアリング」の恐ろしさ!

間取りの設計をする人は、プラニングに入る前に、まずみなさん方の「要望」を聞くことから入りますよね。所謂「ヒアリング」ってやつですね。

でも、ここでの会話のやりとりが、生まれてくる「プラン」に大~きく影響するんです。

「それはそうでしょ、当たり前じゃん!」って思った方、ここでいう会話のやりとりとは、発せられた言葉だけじゃありません。その裏に見え隠れする、言うなれば、何でこの人はこんな言葉を言ったのだろう、何をもとに判断したのだろう…、という言葉の背景とも言うべき根拠が大事になってくるんです。

どういうことかというと、具体的にマムちゃん夫妻の打ち合わせの場面を参考に考えてみましょう。


設計士さん
「一階に和室は必要ですか?」

マムちゃん
「あった方がいいかなぁ~」

設計士さん
「リビングに続いたものがいいですか? それとも独立していた方が?」

マムちゃん
「う~ん…、どっちがいいかなぁ?」

設計士さん
「最近はリビングに続いている方が、日常生活でも気軽に使えますし空間も広がりますから、おすすめですよ!」

マムちゃん
「そうですよね~、では続き間で!」

設計士さん
「大きさはどの位必要ですか?」

マムちゃん
「う~ん…、6畳くらいかなぁ~」


ごくごく普通のやりとりやんけ!と思ったあなた、かなり危険ですね~、気をつけて下さい!

これでは設計士さんのリードのもとに、アッ!という間に、要望は満たされているし文句は無いけれど、これでいいのかわからない プランが出来あがってくるでしょう。

正直、設計の方はたいして頭も使わずに、ひょとしたら出来合いのプランを持ってくるかもしれません。

では、このマムちゃんと設計士さんの会話のやりとりは、どこがいけないのでしょうか?

これは、マムちゃんだけの問題ではありません。設計士さんにもかなり問題があるんです。

この会話のやりとり、マムちゃん夫妻が

★どういう生活スタイルなのか?

★なぜそれを必要としているのか?

★どのように生活の中で活用していくのか?

などの、新しい家での具体的な生活イメージを、設計士さんは全く聞きだしておらず、またマムちゃんも、答えの根拠となる具体的な生活イメージを伝えていません。ひょっとしたら例の如く、全く考えていないのかもしれません。

マムちゃん夫妻の生活スタイルに、

★そもそも和室が必要なのか?

★来客時に使うのか?

★それとも日常の寝室として使うのか?

★座卓を置いてダイニングとして使うのか?

などなど、上の会話からは何も見えてきません。

設計士も設計士で、曖昧なマムちゃんに対して、全く「ヒアリング」ができていません。マムちゃんの言動から、よく考えていないのがバレバレなのにです。

部屋の大きさについてもそうです。もし寝室として親子4人で川の字で寝たい!なんて思っているのであれば、6畳なんて考えられませんよね。テレビや収納家具も置きたい…なんて思っていたら論外です。

それなのに、今持っている家具や購入予定の家具があるか、それをどの部屋に置くか…など、何も確認していなければ、建築後とんでもないことになります。

そういうことを気にせずに、お客様が口にしなかったということでプラニングを済ませてしまうのであれば、出来合いのごくごく普通のよくあるプランをお持ちすればいいわけです。

可も無く不可も無し・・みたいな出来合いのプランで事足りるわけです。

逆に言えば、設計の方は何も設計せずに、頭を使わないで済なわけです。



「自分たちの」+「新しい生活をイメージ」

大事なのは、新居での「新しい生活のイメージ」です。

そしてそれをうまくまとめ上げ、具体的に図面に落とし込み、空間を演出し、数字を決めていくのが設計をする人間の仕事です。

そのためには、日頃から「自分たちの」+「新しい生活をイメージ」することが大事なんです。どこで何をして、ここに何を置き、朝起きてここでこうして、それから…という風に、かなり具体的に想像をして行きます。

過去に、「朝起きてそのまま一番に湯舟に入り温まりた~い!」という奥さんに出会ったことがあります。聞けば、真冬に一度起きて一階の風呂場へ行って追い炊きをし、また戻って、また起きて…という今の生活でのお話を伺い、目覚ましを止めた手で、お風呂の追い炊きスイッチを押しましょう!…と、購入予定のベッド脇にリモコンスイッチをつけたことがありました。

朝ベッドから起きて、よたよたと1階に降りる頃には、お風呂が沸いているようにとね。



イメージノートを作ろう!

みなさんも「具体的なイメージ」を蓄積してみませんか?

自分たちの新しい生活を表現するイメージ写真であったり、具体的にある展示場の一室であったり、雑誌の切り抜きであったり、どんなに些細なものでも構いません。

実現できるかどうか?なんかを心配する前に、「具体的なイメージ」を設計士に伝えることが大事なんです。こんな夢みたいな!…と思われるものでも、伝えるのはタダですからね(笑)

ただし「自分たちの」生活のイメージですからね! パッと見でカッコいい!とかス・テ・キなんていうのは論外ですよ!

○○ちゃん家に△△がついてて、すごく良いって言ってたわよー!的なノリで便乗するのは無しですよ。本当に自分たちにとって△△がある生活が良いかどうか、ちゃんとイメージしてくださいね!

設計する方も、具体的なイメージがつかめた方がやりやすいんです。それに多少難しい要望があった方が、やりがいもありますし、活力が沸いてくるもんなんです。

時間をかけて考えれば、その分思い入れも出てきますから、設計士自身が納得の行く良いプランが出来あがるというわけです。お互いにとって幸せなことですよね!

正直、普通のプランではマンネリぎみですし、そして何より悩んだ量でお金が高くなるわけではありませんからね。設計士さんをうんと困らせてあげましょう(笑)

さぁ、あなたも今日から「イメージノート」をつくってみませんか?

短めにと思っていたのですが、終わってみれば、結局いつもの長さになってしまいました…。


『間取りの博士』の教え:第6話
 ☞ 「イメージノート」のつくり方!


※プロローグでお断りさせて頂きましたが、現在では女性蔑視・差別表現とされている「ご主人」「旦那」「奥様」という呼称が登場しています。ジェンダー・ニュートラルな「パートナー」や「つれあい」という言葉では文脈上誰を指すのかわかりにくく、また公的な場で「夫」「妻」を他人が呼ぶ呼称が未だ定着していないことから、便宜上「ご主人」「旦那」「奥様」という呼称を使用しています。


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