「坪いくら?」その一言が命取り!
ご主人
「おたくは坪いくらでできるの?」
営業マン
「…商品やプラン・設備によって変わってきますが…」
ご主人
「大体でいいよ! いくらでできるの?」
営業マン
「・・・」
ご主人
「30万、40万?」
営業マン
「この展示場は坪58万になりますが、安い商品ですと…(遮られ)」
ご主人
「ダメだ、ここは高いよ! なぁ~母ちゃん!」
みなさんは、総合住宅展示場や建物見学会などで、真っ先に営業マンにこんな質問をしていませんか?
「坪いくら?」って!
家づくりをお考えの方ならば、誰でも一度は言ったことのある言葉なのではないでしょうか。
この言葉が命取りになるの???
そう…、正確にはこの言葉ではなく、この言葉の使い方が命取りになるのです。
このテーマを、なぜ今までとりあげなかったのか?
それは、住まいづくり『プロと博士の教え』を初めから交互に読んで頂いている方はお分かりかと思いますが、『間取りの博士』の教えで前回まで3回にわたって、マードリー博士が「坪単価の謎?」と題うって、この話題を扱っていたからです。
マードリー博士のお話を理解して頂いてから、わたしがこの話題を扱った方がわかりやすいのでと思い、実は終わるのを待っていました。
で、マードリー博士のコーナーでもお分かりのように、「坪単価」はあるケースを除いて全くナンセンスな質問となります。もうお分かりですね、あるケースとは「完成品としての特定の建物」を評価する場合です。
実際に建っている展示場、実際に売られている分譲住宅、実現したあなたの家など、プランも設備も仕様もすべて特定されたひとつの家の評価をする場合のひとつの指標となります。
ずっと読んで頂いている方はお分かりだと思いますが、冒頭のケースの場合、「おたくは(=あなたの会社は)坪いくらでできるの?」と言っています。
答えは言うまでもなく、ピンきりです。逆に言えばお客様次第でいくらでも変わります。
でも、お客様に「ピンきりです!」とか「あなた次第です!」なんて答えはできませんので、とにかく数字で答えが知りたいお客様には、便宜的に冒頭のような発言をします。
しかしこの「坪いくら?」という質問は、営業マンに、
★このお客様は「価格」ありきだな
★全く住まいづくりに対して勉強していない方だな
★単純な方だな
★うちには合わないお客様だな
…などなど、いろんな考えを植えつけてしまいます。
ブランド力のある高級住宅メーカーなら、下手をすればその場で切られてしまいます。切られるとは汚い言葉ですが、営業行為をかけなくするということで、当社のお客様として相応しくないと判断されてしまうことです。
そうでなくとも、相手にされなかったり、適当にあしらわれたり、お客様としての扱いのランクが最低になってしまうこともあります。
定期的に季刊誌やイベント案内なんかが届く、DM管理にでもなれれば良い方でしょう。新人営業マンの電話作戦の練習リストに名を連ねることになるかもしれません。
もうお分かりですね。この一言は使い方を間違えると、あなたのお客様としての価値を下げることになるんです。
では、その後現場はどう展開していくのでしょうか?
ブランド力のある高級住宅メーカーだったら、営業マンに相手にされなかったり、適当な受け答えをされ、せっかくの夢のマイホーム見学なのに、不愉快なキモチを味わうことになるでしょう。
プライドの高い営業マンの中には「ここは高い!」の一言に、内心穏やかではなくムキになる営業マンもいることでしょう。
どうせ切ったお客様ですから、「坪30万円台の家なんて心配ですねぇ~、それでいいならいいんですけどねぇ~」とか、「大地震がきたら終わりですよ。一生に一度の買い物なのに…。大丈夫ですか?」とか、「坪単価が安いメーカーは、後からオプションでどんどん上がりますよ! アレも無いコレも無いで後悔しますよ!」などと、留まる事を知らないくらい、あなたを惑わす言葉を言ってくるかもしれません。
あなたにとっても最初のスタートがこれでは、気分が悪いですよね。
また悪知恵の働くずる賢い営業マンなら逆に、「このお客様は全く無知で、価格ありきの何も勉強していない単純な人だな…」と悟り、チャンスとばかりに得意の営業トークとカラクリで、コロッとあなたを手玉にとってしまうかもしれません。
本気になった営業マンは、冒頭の答えには「ケースによってまちまちですが…」と後でウソを言ったと言われないように予防線を張りつつ、「坪30万円から充分できますよ!」と、とりあえずあなたの注意をひく一言を言い、あなたの期待に答えるかのような振る舞いやサービスによって、あっと言う間に自分のペースで商談を進めていってしまうでしょう。
無知なお客様は、商談に乗ってしまえば、俄然営業マンが有利になります。
話すことすべてが、ありがたいアドバイスに聞こえ、尊敬の念と感謝の念から上っ面の信頼関係が生まれてしまいます。
営業マンはと言えば、知識がついてうるさくなる前に刈り取ってしまおう(これまた汚い言葉ですが、契約することです)と考えますから、その必死さがこれまたお客様には熱心さに見えたりして、まるで魔法にかかったようにスムーズに契約までいってしまいます。
後から知識が付いてきてアレ?と思ったり、周りの人々に家買ったんだぁーなんて報告した際に、いろいろおかしな点を指摘されたりして、はじめてその時に気付きだすのですが、でももうその時には、引き返せないところまで、計画は進んで行ってしまっているのです。
マードリー博士のコーナーでも出てきましたよね! あの手この手で、見せ掛けの「坪単価」を安くする方法。あなたの知らないところで、しっかりと稼がれているんですよ!
どうですか、何気ない「坪いくら?」の一言が、どれだけ営業マンにチャンスを与え、あなたという人間の情報を与え、その後の商談を左右するのか…、もうお分かりいただけましたよね。
では、どうすればいいのか? そこで今日の教えは?
今日の教え
★「坪いくら?」ではなく、「この建物はいくら?」
総合住宅展示場や見学会などで、価格もしくは価格帯を知りたい時には、「坪いくら?」ではなく、
「この建物、間取りや設備はこのままでいくらになるの?」
または単純に、
「豪華そうだけど、この展示場はいくらするの?」
と質問してください。特定の1つの建物として尋ねるのです。そしてその後に、
「この建物は、何坪?」
と聞き、
「じゃあ、この仕様だと坪55万くらいだね!」
と暗算して先に答えれば、営業マンも「うん?」と思うでしょう。
おそらく「ここはキッチンが特別で…とか、下屋が多いので…、普通の2階建てならば40万円くらいで…」とか、通常はそんなに高くないですよ~という補足説明をしてくるはずです。
それに、この受け答えをすることにより営業マンは、このお客さんはよく勉強しているな!と思うはずです。
会話が坪単価から始まるのと、坪単価で終わるのとでは、全く違うわけです。
その結果、安易に「坪30万でやりますよ!」なんていい加減な扱いをされなくて済むはずですし、何より真面目に受け答えや情報提供をしてくれるはずです。
参考までに、「坪いくら?」と似たような命取りな一言として、初期段階の商談で
「おたくはいくらまけてくれるの?/ 値引きはいくらするの?」
「だいたい2000万くらいあれば、家は建つんでしょ?」
といった発言があげられます。
どうですか? お分かりいただけましたか?
最後に、くどいようですが、もう一度!
○○ホーム全体をくくって、「坪いくら?」なんていう指標を持つことはやめて下さい!
「トヨタのクルマはいくら?」、前回はホンダでしたが(笑)、と言っているのと同じですよ。
ヤリスもカローラもレクサスもあるのに、あなたが自動車の営業マンだったらどう答えますか?
で、ここでもう一つ!
上記の「だいたい2000万くらいあれば、家は建つんでしょ?」が、なんで命取りなの???と、引っかかっている方いませんか?
次回は、それについてお話します!
『営業のプロ』の教え:第5話
☞ 資金計画が人生の分かれ道!
※プロローグでお断りさせて頂きましたが、現在では女性蔑視・差別表現とされている「ご主人」「旦那」「奥様」という呼称が登場しています。ジェンダー・ニュートラルな「パートナー」や「つれあい」という言葉では文脈上誰を指すのかわかりにくく、また公的な場で「夫」「妻」を他人が呼ぶ呼称が未だ定着していないことから、便宜上「ご主人」「旦那」「奥様」という呼称を使用しています。