資金計画が人生の分かれ道!
ご主人
「家って、みんなどのくらいで建ててんの?」
営業マン
「…ご予算ですか?」
ご主人
「そう、だいたい2000万くらいあれば建つの?」
営業マン
「そうですね、そのくらいの商品もございますが、ご要望によっても変わってきますし、どこまで含めてかということもありますので、一概には…」
ご主人
「同僚も最近家建てて2000万だったって言ってたし、年収も変わらんしうちもそのくらいで考えてんだけどさぁ~、大体そんくらい考えときゃなんとかなるんでしょ?」
営業マン
「・・・」
みなさんは、住まいづくりにおける「資金計画」について、どのようなお考えをお持ちですか?
当たり前ですが、お金が無ければ家は建てられません。なのに、なぜか最後まで本気で向き合わない方が多いのもこの「資金計画」です。
すべてが出揃い、見積りの段階まできて、改めて資金計画と現実のズレに気付く方が多いのです。
ごく一部の全額キャッシュで購入される方を除き、「資金計画」はある面、多くの方の夢を奪うモノかもしれません。そんな気持ちが、ちゃんと向き合わずにズルズルと先送りさせる原因なのかもしれません。
いずれにしてもこの「資金計画」。実はここにお客様の住まいづくりの大きな落とし穴が潜んでいます。お客様側の立場からすると、夢のマイホームでの新生活が、本当に夢のある生活になるかどうかのキーポイントになります。
そして営業マン側から言えば、以前にもお話したお客様をどう判別・ランク分けするかのキーポイントになります。
冒頭の会話の中での資金は「2000万」という数字です。ここでは総額としてのニュアンスが強いのですが、問題はこの数字の裏づけです。
このお客様は、平均的なお客様の相場や同僚の話から、求める家の大きさなどが自分たちも似た感じなので、そのくらいでなんとかなるという安易な考えをしているということです。
★みなさんは、「資金計画」をする時に何から先に考えていますか?
実際にマイホームを手にして、新生活が始まった時に、現実的に問題になるのは、いくらの家を建てたかでも、自己資金の額でも、ローンの借入総額でもありません。
大事なのは、月々いくら給料(家計)から引かれていくか!です。
借入額が1000万だろうが3000万だろうが、月々の支払い額が、現実的に自分たちの生活にのしかかってくる数字なのです。
間取りで失敗したとか、もっと早く建てればよかった…など、家づくりにおける失敗談はよく聞きますが、この「資金計画」の失敗は、失敗というレベルではありません。
新生活を幸せなものにするかどうかを握っているばかりでなく、ゆとりあるバラ色の人生を送るか、借金のためにキツキツで休むことなく働く人生になるのか、あなたの人生そのものを決定づけることになりかねません。
話がちょっとそれましたが、このことをわかっているかどうかは、家づくりにおいて非常に大事なことです。
その証に、このことをわかっているお客様は、「資金計画」のスタートを、現状での住まいにかける金額がいくらなのか?からスタートします。
今、アパート暮らしであるならば、月々の家賃をもとに借入額を考えます。
具体的には、月々の家賃 + 駐車場代 + 家づくりのための毎月の積立金額、マイホーム取得後の生命保険の見直し差額…等の、月の合計額から逆算し、借入額を割り出します。
それに自己資金を足したものが、家づくりの総予算になるわけです。
★「総予算」=月の合計額から逆算した「借入額」+「自己資金」
例えば、現在、家賃:7万円 駐車場:1万円 積立額:1万円 保険差額:1万円の合計10万円が、毎月の返済に充てられる金額だとします。
仮に30年ローンの返済金利が2%だとすると、100万円あたりの月返済額額は3,696円となり、月額10万円をこの数字で割ると、100,000円÷3,696円≒27ということで、ざっと2700万円借りられることがわかります。
もちろん所得が低かったり、他に借金があったりで減額される場合もありますし、逆に低金利時代なら、同じ返済額でもっと借入れもできるでしょうが、ここでは便宜的に2700万円とします。
これに自己資金が800万円あるお客様なら、自己資金800万円をたした800万円+2700万円=3500万円が、このお客様の総予算となります。
おわかりですか? 最初にあてずっぽの3500万円!(冒頭の会話なら2000万円!)といういい加減な予想数字があるわけではなく、新生活における無理の無い負担額から逆算して総予算は決まっていくものなのです。
この総予算はお客様個々によってすべて異なるはずですし、時代によって金利も異なりますから、当然影響を受けます。
ただハッキリしているのは、年収が同じだからとか、同じ大きさの家を考えているから…などで、総予算は予想できるものではないことです。
このように逆算をして、自らの新生活を具体的に設計・イメージできているお客様は、冒頭のような発言は絶対にしないのです。
そして何より、新生活が始まっても、無理な生活スタイルや窮屈な思いによる変なストレスが無く、夢のマイホームでの幸せな生活を満喫できるのです。
いままで吸っていたタバコや呑みに行く回数を減らしたり、お小遣いが減らされたり、いずれも奥さんの狙いであったりしますが(笑)、家族旅行を近場で済ますようにしたり、洋服を買うのを諦めたり…と、夢のマイホームのために、今までの生活での楽しみを削るような事態には陥らないで済むのです。
生活スタイルを変えることは、なかなか難しいことですし、何よりマイホームの夢が生活の楽しみを奪ってしまっては、決して楽しい人生を送ることには繋がりません。
それくらいこの「資金計画」というものは、マイホームづくりを行う上で重要なポイントになるのです。
では、なぜ?冒頭の言葉が命取りになるのでしょうか?
もうお分かりですね。先ほど少し触れましたが、営業マンは資金力によってお客様を判別します。
お客様が語る理想のマイホーム像、建物の大きさ、設備などの要望と、お客様が口にする現実の予算とのズレを考えます。
例えばヒアリングの中で、「リビングは最低20畳、書斎・防音室も欲しいし、屋上もいいなぁ~」というお客様の言葉を笑顔で聞きながら、その裏で逆算により予算をシビアに計算し、頭の中でお客様の理想と予算とのギャップを叩き出しています。
お客様がとんでもなく身の程知らずで現実離れをしている方や、どう考えても最低限の建物でさえ自社の単価では難しい…となれば、適当に遊ばれたり、切られたり(またまた汚い言葉ですみません!)することでしょう。
また逆に、お客様が資金的に余裕があるのに、家族みんなが生活できる最低限のレベルでいい…と控えめだったり、十分実現可能な要望を自分たちには無理だよねぇ~と諦めている場合などは、間違いなく超ホット客(=しっかり利益を稼げる)扱いになるでしょう。
業者によっては、格好の餌食となりボラれるかもしれません。
己を知り、それ相応に現実を把握していることが、営業マンと対等にわたりあうためには重要なことなのです。
そこで、今日の教えですが、
今日の教え
★とにもかくにも、自分の総予算額を知っておこう!
資金シミュレーションは、銀行系のサイトや住宅メーカーのサイトにありますので、簡単にできると思います。EXCELでも簡単に計算できますが、数式を万が一間違っていると大変ですので、出来合いのものを使うことをおススメします。
その上で、
★把握した予算総額より、ちょっと背伸びしたくらいの要望を口にしましょう!
ちょっと上くらいのお客様は営業マンに切られたりしません。むしろなんとかして取りたい!(=契約したい)と営業マン心理をくすぐるものです。
そこらへんの駆け引きをうまくやっていくと、思わぬ好条件が引き出せるかもしれません。
今回は、特別に営業マンが使うテクニックを、一つお教えしましょう。
予算の把握ができていないお客様に、現実を知ってもらうために、この逆算した総予算をいきなりつきつけるテクニックです。
夢見るお客様は、どこまでも舞い上がってしまうので、ガツン!と最初に目を覚まさせてあげる目的もあるのですが、商談をうまく展開させるための営業手法の一つでもあります。
この手法は、どのくらい突き落とすか(お客様に身の程をわきまえてもらう)がポイントであり、営業センスが問われるところなのですが、落とし過ぎて、お客様の夢を奪いすぎ不愉快に思われると、逆にお客様に切られてしまいますし、中途半端では、要望>予算で予算超過のままであり、その後の商談の展開がきつくなります。
初めの段階で、要望<予算で、尚且つお客様に切られない程度に落とし(抑え)コントロールすることが、営業マンの狙いなのです。
その後の商談で徐々に持ち上げて行き、最終的に要望=資金で抑えられれば、営業マンにとってもお客様にとっても、ウィンウィンで良いわけです。
商談の後半戦で、「それはちょっと予算がオーバーしますから…」などと要望を削っていては、回を重ねるごとに商談が盛り下がり、到底契約には至りません。
逆に、徐々に「アレも実現出来そうですね~、コレも行けます!」と、プラスしていけば、お客様の気持ちも盛り上がりますし、何より当初よりも営業マンが頑張ってくれているという印象につながります。
この最初の落とし具合が難しいのですが、優秀な営業マンは、瞬時にお客様の性格やその場の雰囲気から、うま~く妥協点を見つけ誘導していきます。
ちなみに最終的に商談を盛り上げつつ、要望=資金ではなく要望<資金で抑えきって契約すれば、場合によっては利益の上乗せ(利益率の高いまま契約)にもつながり、会社での営業マンの評価もアップします。
覚えておいてくださいね!
どうですか? お分かりいただけましたか?
わたしが新人の頃は、月々のローンの返済額を金融機関の融資ごとに、借入年数ごとに、1円単位まで覚えさせられました。
接客時に、目安のご予算を暗算し即答できるようにするためで、毎日朝礼で「月々7万、公庫25年、借入れいくら!」と上司に質問され、答えるのに必死だったことを思い出します。
しかも現実は厳しく、コロコロ金利は変わっていくので、かなり振り回されましたが、こっそり手に書いたりもしていました…(笑)。
今はパソコンでもスマホのアプリでも簡単に出せますし、他のツールも充実していますので、誰でも簡単に導けますが、それだけに営業マンの質も微妙に落ちている気もします。
会計ソフトの普及で、手書きの簿記ができない経理の人が増えているように、住宅の営業マンもソフト頼みで、自分で資金計画ができない人間が増えている気がします。
逆にわたしが朝礼でされたような質問を、営業マンに投げかけてみて反応を見てみるのもいいのではないでしょうか?
慌ててカバンを広げたり、スマホで調べるような営業マンなら、とても任せられませんよね。
逆に堂々と「では、次回調べてお持ちします!」なんてのも、ある意味営業マンらしいのですが、こんなレベルのことをいちいち宿題として持ち帰られても困りもんです。
このように、営業マンにランク分け・判別される前に、あなたが営業マンを判別してみてはいかがでしょうか?
どうですか、少しはお役にたちましたか? では、次のお話へ!
『営業のプロ』の教え:第6話
☞ 営業マンは見た!
※プロローグでお断りさせて頂きましたが、現在では女性蔑視・差別表現とされている「ご主人」「旦那」「奥様」という呼称が登場しています。ジェンダー・ニュートラルな「パートナー」や「つれあい」という言葉では文脈上誰を指すのかわかりにくく、また公的な場で「夫」「妻」を他人が呼ぶ呼称が未だ定着していないことから、便宜上「ご主人」「旦那」「奥様」という呼称を使用しています。