あなたはファンになれますか?

住まいづくり『プロと博士の教え』 第3話

住まいづくり『プロと博士の教え』

~『営業のプロ』の教え ~

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あなたはファンになれますか?

営業マン
「自己資金はどのくらいをお考えですか?」

ご主人
「・・・」

営業マン
「一般的には500万円~700万円くらいのお客様が多いのですが、いかがですか? もっとご用意を…」

ご主人
「いや、いや、そんなには…」

営業マン
「では、300万円くらい?」

ご主人
「まぁ、もうちょとくらいは…」



みなさんは、本当は答える気はなかった質問に、ついつい答えてしまい失敗した経験をお持ちではありませんか?

住宅の営業に限らず一般的な営業ビジネスにおいて、「ヒアリング」というものは非常に大事なこととされています。「ヒアリング」がうまいか下手かで、その営業マンの能力がわかるといっても過言ではなく、後の商談の流れを変え、大きな差をもたらします。

経験された方は思い出して頂きたいのですが、住まいづくりの初期段階においては、どこの住宅メーカーにしようか?という以前に、どんなメーカーがあるのか候補に挙げる業者の名前すら分からず、ましてやこれからどのような流れになるのか、またどのようにして選んでいけばよいのかなど、全く見当がつかないのが普通です。

そんな折り、休日にフラッと総合住宅展示場などに行かれると、どこへいっても同じような質問をされることに気付きます。

こちらをご覧になるのは初めてですか?
新築をお考えですか?建替えですか?
いつ頃お考えですか?
二世帯住宅ですか?
どちらかお話されているメーカーさんはおありですか?
資金計画をされたことはございますか?

などなど、次から次へと同じような質問を受けます。

大概は玄関前に並べられた子供向けの景品をエサに誘い込み、アンケート記名を迫られ、そこには同じような質問事項が並んでいます。

そんな時、みなさんはどうされますか?



体育会系のガンとした方!?(笑)なら怖いものなしでしょうが、一般的には全くわからない初めての住まいづくり、その上人生で初めての総合住宅展示場巡りとなると、緊張したり動揺したりで、わけがわからないままに、次々にソフトな言い回しの営業マンの質問に答えてしまっているのではないでしょうか。

そこにつけ込むのが営業マンです。

一般的には、こういう方が多いのですが…
みなさんこうされるのですが…

という表現を巧みに使い、 あなたも他の方々と同じですよ!決して特別なことでも急ぎすぎているわけでもないですよ!という、悪魔の囁きを言葉の裏に潜ませながらみなさんを安心させ、次から次へと「ヒアリング」を繰り返し聞き出しを行います。

なぜ?このように、初対面の初期段階から、営業マンは必死にいろいろな質問をしてくるのでしょうか?

それは、あなたをふるいにかけているからです。

みなさんが、住宅会社を選別しようとしているのと同じように、営業マンもみなさんをランク分けしながらふるいにかけているのです。

契約見込み度と言ってもいいでしょうか、すぐにお客様になる方、将来的になりそうな方、ある条件をクリア(例えば資金とか売却)すればお客様になる方、全く自社には合わない方などなど、その選別の仕方は住宅メーカーにより、また営業マンにより様々ですが、最終的な目的は同じです。

効率よく契約をとっていくためには、いわゆる「ホット客」を見つけ出すことが大事になります。すぐに「ホット客」にならずとも、一番「ホット客」に近い存在を初期段階で見つけ出せれば、営業にとってこんなに楽なことはありません。

あなたがもし子供の進学に合わせて春までには…などと、1年以内に確実にマイホーム計画をお考えだということを伝えたならば、きっと「ホット客」になっていることでしょう。

もしそれが半年以内なら、いや3ヵ月以内だったら、所謂「ド・ホット客」になっているはずです。

そうでなくとも、質問に具体的に答えられれば、少なからず住まいづくりを考えていることがわかりますし、何より真剣な受け答えそのものにマイホームを購入する動機・購買意欲が感じられます。

質問されるままに正直に答えていたら、その行為自体、実際にあなたが「ホット客」「ド・ホット客」になりうることを、みんなに言って回っているようなものなのです。

そんなお客様をどこの営業マンも逃がしませんから、その後は、電話やDM攻撃は序の口、礼訪(来場お礼の訪問)、夜訪(夜の訪問)、見学ツアーへの連れ出しなど、それに見学した業者数を掛けただけの営業攻撃を受けることになります。

これがよく言う住まいづくりにおける修羅場状態です。

最近では悪徳営業などが社会問題となり、その傾向は弱まっていますが、かつては毎日のように押しかけてくる営業マンに、奥様がノイローゼになられる方もいらっしゃったくらいで、これではせっかくのマイホーム計画が嫌なものになってしまいますし、実際この段階で精神的な苦痛から、計画を中断したり止めてしまう方も少なくないようです。

理想の候補を選ぶ前に、不本意ながら選ばれてしまったあなたは、たまたま入った展示場の住宅会社の営業マンたちのペースでズルズルと計画が進められ、一方で毎日の生活を犠牲にするという、なんとも理不尽な状態に陥ります。

さらには、本当は自分たちの理想の住宅メーカーに出会えたかもしれないのに、どうでもよいメーカーに時間が割かれ、それらを置き去りにしたまま、住まいづくりが進んで行ってしまうのです。



もうお分かりですか?

何もわからない初期段階において、総合住宅展示場に行くな!と言っているのではありません。むしろ実際の建物を見たり、営業マンからいろんなお話を聞くことは、プラスになりますのでおススメします。

実際に会話の中で知識も得られますし、場慣れもします。何をどうしたら良いのか方向性も見えてきますし、また今後の商談に対して武装もできますから、対応さえ間違えなければ、悪いことではありません。

重要なのは、何もわからない初期段階ならば、初期段階の答え方、つまり軽~いノリでいきましょう!ということです。住宅の営業マンが、このお客様はまだまだ先だけど、当社に好意をもってくれている…と感じる程度の印象を持ってくれるように、手の内は明かさず抑えておきましょう。

これが所謂「ファン客」状態です。

車を買うならホンダ! 買い物ならイオン! スマホならアップルみたいな、そのメーカーの「ファン客」になるのです。

ただ、全く見当はずれな受け答えしかできないのでは、単なる軽~いお客様であり「冷やかし客」とみなされ処理(失礼な言い方で済みません)されてしまいます。冷やかし客を相手にするほど、営業マンは暇ではありませんから、おそらくその時点で切られてしまうでしょう。

相手にしてもらえないと、今後住まいづくりに関する有益な情報(土地や分譲物件などの情報や定期雑誌など)も貰えなくなってしまいます。

ですから初期段階では、自分の情報は与えず、情報はもらう…そんな「ファン客」を演じましょう。

そんなにうまく行くわけないじゃん!とお思いでしょうが、それがなれる方法があるんです。

そこで今日の教えは、




今日の教え

★とことん「ファン客」を演じろ!

今後候補になりうる住宅メーカーの営業マンの質問に対して、無視することは将来的にも得策ではありません。お互い第一印象は大事です。今後の商談においても、損得に関わります。

また、前述のように、すべてに正直に答えていると、あなたは途端に、まな板の上の鯉になってしまいます。そんな時のキーワードが「ファン客」です。

あなたがこの住宅メーカーのファンであり、営業マンのファンなんです!と、相手に思ってもらうことです。これは、営業マンにとっても、自分が選ばれたことの喜びに加え、将来的な見込み客が見つかったわけですから嬉しくないわけありません。相思相愛です。

そうなればこちらに対する印象も良いわけですし、住まいづくりへの協力も惜しまなくなります。そして何より今後具体的な質問に対して、ハッキリとした答えをしなくても、なぜか好印象のまま許されてしまうのです。

例えば冒頭の質問にも、

「500~700万円ねぇ~みなさんお金持ちなんだねぇ~(笑) ○○くん、何とかしてよー!」

でOKです。次の質問にも、

「300万か~、プリウスに乗れそうだねぇ~(笑)」

でも、なぜか「ファン客」になっていれば、営業マンに不快感を与えずに済んでしまうんです。ですので、まずは「ファン客」になることを第一に考えてください。

で、ここで疑問が???

冒頭のやり取りが、初対面で「ファン客」になる前だったらどうすんの?…と。そうです、「ファン客」になる前に、前述のような軽い受け答えをしたら、「冷やかし客」になってしまいます。

そこで、まずは「一般的に…」や「みなさん…こうそされています」的な、ソフトな誘導トークには絶対に乗らずに、この一言で切り抜けてください!

「まだわかんないんだよねぇ~、でも頼むときはAホームの山田さん、あなたにお願いするから…、よろしく頼むよ!」

です。そして、たて続けに、

「名刺もらえる?」

とか、事前に名刺を貰っていたならば、その名刺を手にとりじっくり眺めながら、

「“やまだ いちろう” さんでいいのかな? いい名前だねぇ~、(妻に向って名刺を渡しながら)おい、よく覚えておけよ! イケメンの山田さんだよ!」

と、名前の読みを確認しながら、営業マンの名前を口に出して繰り返しながら持ち上げます。

これできっと営業マンのハートを鷲掴みにして、あなたは「ファン客」になれたことでしょう。

ただでさえ初対面の挨拶程度で、上記のように名前を覚えてもらうことが無い営業マンにとって、これだけでも嬉しいことなのに、そのうえ名前の読み方の確認までしてくれたのですから、悪く思う営業マンがいるわけがありません。

初対面でそこまでするお客様は、まずいませんから…

営業マンはおそらく帰りの玄関口で、たくさんのカタログと子供へのノベルティを片手に、「何かお聞きになりたいことがありましたら、なんなりとわたくしにご用命ください!」と言いながら、見送ってくれるのではないでしょうか。


どうですか、おわかりになりましたか?

実は営業マンの悩みの一つが、同業他社がひしめく中、お客様に会社名と自分の名前、そして顔を覚えてもらえないという事なんです。家電製品や八百屋さんと違って、住宅というものは、名前も知らない営業マンから購入したりしません

ですが、展示場やイベントなどで、何回名乗っても、通常は覚えてもらえません。

もし会ってすぐに、どこの会社の誰々と分かってくれたならば、それだけで営業マンは嬉しいものなのです。毎月かかさず訪問しても覚えてもらえない営業もいますし、ライバルメーカーの名前を言われガッカリする営業もいます。

そんな中、お客様に名前を覚えてもらい、名刺を大切にされ、わざわざフルネームで名前を確認されて、嬉しくない営業マンがいるでしょうか?

そういうわたしも、長年お客様に乗せられてきましたが、将来的に契約するかしないかは別として、自分たちの住宅を気に入ってもらえたり、自分を気にしてもらえたということは嬉しいわけで、それだけで自然と足が向きましたし、自分にとっては宝物に感じました。

ですが、このことが営業マンにとっては、落とし穴なのです。



実は、営業セミナーなどで、お客様の判別で一番難しいとされるのが、購買能力のない「ファン客」なんです。購買能力がない「ファン客」とは、どんなに時間をかけ育てていっても、絶対的な条件が欠けていて、永久に「ホット客」にならないお客様をいいます。

あと300万自己資金が貯まれば…と思っていたら、浪費家でとても貯まるはずのない生活状態だったり、いい土地があったらね…と言いつつ、転勤族で全くその気が無かったり、実は実家に戻っての建替えを考えてて、根本的にテリトリー外だったり…と、その時になってはじめて営業マン自身が、越えられない解決できない問題にやっと気付くのです。

それまで自社の商品に興味をもってくれ、話も聞いてくれるし、展示会や工場見学にも快く参加してくれて、具体的なプランの話や設備の話までいろいろと会話も弾んでいたのに、そういう時が続けば続くほど、この「ファン客」に営業マンは陥ってしまうのです。

もちろんお客様は営業マンを騙しているわけではありません。本当に興味があって、本当に話を聞きたいから、営業マンと会っていたわけです。

でも、このようにして毎月貴重な営業時間を無駄にして、実績をあげられない営業マンを、今までたくさん見てきました。もちろんわたしも入社当初は、よくこの手のお客様に捕まっていました。

自分の話を聞いてくれる、相手にしてくれる、そんなお客様のところへ足が向くのは、人間としては自然なわけで、だからこそ若輩者の営業マンにとっては、大きな落とし穴となるのです。

ですから、「ファン客」になるということは営業泣かせなわけで、みなさんにとっては、実に好都合なポジションだと言えます。

「ファン客」になると、軽~いノリでも、相手を馬鹿にした印象は持たれず、むしろフレンドリーな感じで好印象を与え、尚且つ無視できない存在であり、それでいてちょっとのことならなんでも許されてしまうという、夢のような存在になってしまうのです。

そんなにうまくいくもんか!とお思いの方も多いかと思いますが、まずは一度試してみてください。状況や会話の流れはまちまちでしょうが、「ファン客」になるための基本的な流れは同じです。

どうですか、少しはお役にたちましたか? では、次のお話へ!


営業のプロ』の教え:第4話
 ☞ 「坪いくら?」その一言が命取り!


※プロローグでお断りさせて頂きましたが、現在では女性蔑視・差別表現とされている「ご主人」「旦那」「奥様」という呼称が登場しています。ジェンダー・ニュートラルな「パートナー」や「つれあい」という言葉では文脈上誰を指すのかわかりにくく、また公的な場で「夫」「妻」を他人が呼ぶ呼称が未だ定着していないことから、便宜上「ご主人」「旦那」「奥様」という呼称を使用しています。


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