「イメージノート」のつくり方!

住まいづくり『プロと博士の教え』 第6話

住まいづくり『プロと博士の教え』

~『間取りの博士』の教え ~

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「イメージノート」のつくり方!

前回まで「自分たちの新しい生活をイメージすることが大事!」なんてことをお話してきましたが、大丈夫ですか?

覚えていますか?マムちゃん夫妻の失敗談も!

イメージノート」を片手に、「ハイ!」って何人の方が答えてくれているのでしょうか?

ちょっと不安もあるのですが、今日はその「イメージノート」の具体的なつくり方を考えてみたいと思います。



実は前回の配信後、「イメージノート」をどうやって作ったらいいのか? という質問がありまして、わたしは簡単に考えていたのですが、真剣なみなさんには少々説明が足りなかったみたいですね。

反省しています。。。

でも、本当にかしこまって作るものじゃなくて、走り書きでいいわけですし、切抜きをスクラップしたものでいいんですが、こういう伝え方がよくなかったみたいです。

何でもかんでも、見たり聞いたり気になったものすべてを、「イメージノート」に書きとめるという風に思われちゃったみたいで、大変なことになっちゃったみたいです。

自分たちのイメージ」ですよ!と強調したつもりだったのですが、なかなかうまく伝わらなかったようで…。

ではでは、またまたマムちゃん夫妻に登場してもらいながら、説明していきましょう!



せっかくのノートづくりが…

マムちゃんは、早速切抜きをはじめることにしました。

マムちゃんお気に入りの「ダイニングカウンター」、「オーブンレンジ付きの高価なキッチン」の写真、パンづくりやみんなで料理ができそうな「アイランドキッチン」の写真、家計簿をつけたりアイロンがけに利用できる「家事コーナー」の写真、ティータイムを演出する「オーニング」、寝室壁面いっぱいの「折戸式クローゼット」と、次から次に写真をペタペタ、一生懸命「イメージノート」づくりに励んでいました。

そんな時、マムちゃんの「イメージノート」の話を聞き、先を越されていた旦那さんが、趣味のクルマいじりを実現すべく、リビングからガラス越しに中が見える、英国式のクルマ2台分のビルトイン・ガレージの写真を片手に、マムちゃんに


旦那
「ノートはどこ?」

マム
「ハイ!」(手渡しつつ、目に飛び込んできた写真を見て)
「何よこれ? こんなのダメよ! 何考えてんのよ!」

旦那
「ハァ、何でもいいって言ったじゃないか!」
「俺の夢なんだよ! “男のロマン”なんだよ! いいじゃないか!」

マム
「冗談でしょ! バカじゃないの!」
「そんなの本当の夢物語じゃない! 無理に決まってるでしょ!」

旦那
「本当の夢のどこが悪いんだよ!」
「とりあえずでもイメージを伝えなくちゃ、話にならないだろ! 相談してみなくちゃ、わからないじゃないか!」

マム
「もっとましなこと考えられないの!」
「お金持ちじゃあるまいし、どこにそんな大金があるのよ!」


って、夫婦喧嘩が始まっちゃったから大変。まだまだ続くありさまで、



マム
「ほら見てよ! わたしは毎日の生活をまじめに考えてやってるのよ! ちゃんと実用的なものを考えてんの!」
「“男のロマン”なんてふざけないでよ!」

旦那
「オイ、待てよ! 何だよこのキッチン! オーブンレンジ付きなんて、この前いいやつ買ってやったじゃないか!」
「それにこのテーブルはどうすんだよ!」

マム
「・・・」

旦那
「(オーニングを見て)何だよこれ! オープン・カフェじゃあるまいし、誰がこんなの使うんだよ!」
「どうせ最初だけだろ~こんなの!」

マム
「寛げるのよー、自然を感じられて空気もおいしいし!」

旦那
「何言ってんだバカ! それこそ“女のロマン”の腐ったのじゃないか!」
「大体ココだぞ! 都会のど真ん中でこんなの造ったって、寛げるわけないだろうが、ボケ!」


かなりヒートアップしちゃって、喧嘩はどんどんエスカレートするばかり。いつものこととはいえ、止まる所を知りません。


旦那
「それに何だよこれは、こんなクローゼットどうすんだよ!」

マム
「うちはモノで溢れてるのよ! 洋服もいっぱいあるし!」
「あなただってたくさん持ってるじゃないの!」

旦那
「今足りてるじゃないか、それにどうすんだよ、お前が持ってきたあの大きな嫁入りダンスは…、捨てんのか!」

マム
「・・・」

旦那
「お前こそ、ちゃんと考えてんのか!」

マム
「…もういいわよ、あんたの好きにしなさいよ!」


どうやら、追い詰められたマムちゃん、逆ギレしちゃたようです。

この会話、いや喧嘩ですね(笑)、どちらが正しくてどちらが間違っていたのでしょうか?

実は、どちらもちょっとづつ正しく、ちょっとづつ間違っていた感じですね。ですが、一生懸命ノート作りをやっていたマムちゃんの方が、ちょっと分が悪いようです。

でもこの喧嘩の中に、「イメージノート」づくりのヒントがたくさん出てきたんですよ、お気付きになりましたか?

では、順番に喧嘩の内容を見ながらお話しましょう。マムちゃん夫妻を知らない方でも、すぐに光景が浮かぶかと…(笑)



ノートづくりに問題が?

まずはマムちゃん、すぐにノートづくりを行ったその行動力は◎です。でもって、切抜きをしたことも◎。問題は、その中身だったようですね。

実はマムちゃんは、先へ先へと理想の生活のイメージが先行するばかりに、地に足がついていなくて、「今の生活」を振り返ることを、ちょっと忘れてしまったようですね。

確かに自分のイメージではあるのですが、「今の生活」を忘れてしまってはいけません。しっかり「今の生活」を考慮したうえで、「自分たちの生活」をイメージしなければいけません。

×現実を知れ!
×身分相応にしろ!
×夢見ることを諦めなさい!

と、言っているんじゃないんです。

今の生活」で、

〇変えられないもの
〇変えたくないもの
〇受け継ぐもの

などをしっかり把握して、自分たちなりに整理したうえで、イメージを固めていくことが大事なんです。

ではひとつひとつチェックしてみましょうか。



まずはキッチン!

旦那さんが言うように、マムちゃんはお菓子づくりが大好きで、安いシステムキッチン分くらいの高価なオーブンレンジ(羨ましい!)を買ってもらったばかりだったんですね。

毎日満足して使っているみたいですし、まだ買って日も浅いですし、マムちゃん自身、これを手放す気にはなっていませんでした。

ですが、ビルトインされたオーブンレンジ付きのシステムキッチンの、そのスッキリしたイメージに、すっかり舞い上がってしまったようです。

ダイニングカウンターにしても、配膳が楽だったり、会話がはずみそうで…と思っていたものの、今のテーブルは、結婚してはじめて2人で買った想い出の品。冷静に考えれば、手放すはずもなく、これはちょっとまずかったようですね。

アイランドキッチンに至っては、「パンづくりや、みんなで料理がしやすいよ!」と言う、友人の言葉をそのままに切り抜いたもので、実際にはマムちゃん自身、その気があるのか自分でも?の様子です。

でもこれらをノートに貼り付けちゃいけないというわけではありません。

大事なのは前述のとおり、「今の生活」から変えられないものや受け継ぐものをどうするのか、それらを踏まえたうえで、新しい生活のイメージを具現化したものになっているか、しっかりとした「自分たちの」イメージや考えをノートに示し伝えることです。

つまり、写真のようなイメージがただ好きだ!というのではなく、新しい生活のイメージがこういう感じで、今あるオーブンレンジやテーブルは活かしたい! なんとかしてください先生! というニュアンスでしょうか。

オーダーメイドで今のレンジがビルトインされるかもしれませんし、ビルトイン出来なくとも、そういうマムちゃんの意向を受けた設計士さんは、背面にオーブンレンジがスッポリ収まるオリジナルの壁面収納を提案してくれるかもしれません。

いずれにせよ具体的な「自分たちの」イメージと、何をどうするかという「自分たちの」考えがハッキリしていれば、プラニングはしやすくなります。

単なる憧れを言っている間は、何も実現しませんよ!



そして、オーニング!?

マムちゃんは、友達と水辺のオープン・カフェに行くのが大好き! でもって、コレに憧れていたんですね。

でも旦那さんの言うように、都会のど真ん中で目の前は大通り、この環境ではちょっと厳しい感じです。

でも、これは書き留めておいていいんじゃないでしょうか。これこそひょっとすると、設計士の腕の見せ所になるかもしれませんから。

ただ心配なのは、旦那さんが言うように、初めだけで結局今まで通りにオープン・カフェへ出掛ける生活は変わらず、使われなくなっちゃうのでは…という点です。

そこらへんのこと、つまり自分なりにオーニングのある具体的な生活をイメージしていて、本当に有効活用できそうなのか、そういう生活が描けているのか、もう少し深く考える必要があったかもしれません。

描けていれば、これは「イメージノート」の時点では残しておいてよいでしょう。次のステップで、具体的な案として残すかどうかを、考えればいいことですから。



問題のクローゼット!

これは多くの奥さんが憧れるものですが、ここで出てくる問題が「嫁入り家具」です。

当然のようにこの家具セットは、材質もよく高価なものであり、何よりご両親の気持ちが込められていたりするわけで、単純に捨てるわけにはいきません。

マムちゃん自身、捨てる気はありませんし、といって実家に戻すのも変な話で…。

もちろん壊れたり痛んだりもしていませんし、旦那さんが言う通り、今現在利用しており、特別収納が不足しているわけでもありません。

さて、どうしたことか?

マムちゃん希望の寝室壁面いっぱいの「折戸式クローゼット」、実はここで重要なのは、マムちゃんがこの写真を切り抜いた真意です。

この写真の裏には、部屋をすっきりさせたい!、将来に備え収納がたっぷり欲しい!、一箇所にまとめたい!というマムちゃんの気持ちがこめられているんです。

つまり、嫁入り家具のことが頭から飛んでしまったことは問題ですが、収納に対する思い・イメージは、決して間違っていないと思います。

この自分の収納に対する思い・イメージを、写真にプラスして言葉で書いておけばいいんです。そしてできれば、「嫁入り家具」についての考えや気持ちを添えておけば良かったんですね。

「捨てられないけど、なんとかしたい!」とね。

きっとそれを見た設計士さんは、折戸式になるかどうかは分かりませんが、壁面収納の中に嫁入り家具をうまく収めたり、ウォークインクローゼットを提案したりして、嫁入り家具をうまく収めるとともに、プラスαの収納を実現しつつ、寝室をすっきりしたものにデザインにしてくれるのではないでしょうか。



そして旦那のガレージ!

さて、今度は旦那さんのガレージです。この“男のロマン”、あなたならどうしますか?

って、これを読まれている方は、男性の方が多いんでしょうかね?

「そうだ!そうだ!叶えてやれー!」と、旦那さんを応援する声が、画面の向こうから聞こえてきそうですが、決してみなさんに押されている(笑)わけではないのですが、これはこれで残すべきだと思います。

ただしこれも、この写真のどういう部分を求めているのか、単にビルトインしたいだけなのか、シースルーの窓の感じなのか、はたまた英国式の雰囲気なのか、自分の言葉をプラスする必要がありますね。

もちろん現時点では、マムちゃんの旦那は、写真をただ手にしていただけですから、それだけで責めるわけにはいきません。これをそのまま実現させる!というのであれば、マムちゃんが怒るのも分かりますが、まだ何も聞き出せていないのですから、わからないですよね。

マムちゃんの旦那さんがどう思っていたのかは?ですが、雰囲気がこのイメージに近いものだったり、一部を採り入れて欲しいというものであれば、十分実現できそうな気がしますし、きっと旦那さんも満足するのではないでしょうか。

そうはいかなくとも、設計士としては、旦那さんが求めるものを掴むことは大事なことであり、これは欲しい情報なんです。

まぁ、マムちゃんからすれば、もう少し現実的な写真が良かったのかもしれませんが…。それに「英国式」というのも良くなかったかもしれませんね(笑)



と、ざっと見てきましたが、もうお分かりですよね。

「イメージノート」は、何でもかんでも、ただ貼り付ければ良いというものではないんです。くどいようですが、大事なのは「自分たちの新しい生活」をイメージできているかです。

もう何回も聞いたよ!って思っているあなた、よ~く考えてください!

「自分たちの新しい生活」をイメージしていくためのノートではないんですよ! イメージそのものなんですよ、このノートは!

言い換えれば、イメージありきでノートが後なのです。

つまり、貼り付けたり書き込んだりする前に、それがあったり実現できた生活をイメージできているのか? が重要なんです。

建物や間取りをイメージするだけではだめですよ、そこで生活している自分や家族の姿を、その空間の中にイメージできていることが大事なんです。

朝起きて夜寝るまで、毎日の行動パターンや習慣、個々の性格に、時にはモノに対する価値観など、自分たちの色々な要素を踏まえて描かれたその空間像を、ノートに書き込むわけです。

何が言いたいか分かりますよね?

ノートを作りながら、イメージを膨らませていくんじゃないんですよ! 自分たちがイメージしたものを、より正確に人に伝えるために、または自分たちが忘れないように、綴っていくものなんです。

もう分かってくれましたよね!

自分たちの新しい生活」のイメージが無いところに、「イメージノート」は存在しないわけです。

思いつきでノートづくりは出来ないわけで、それを見た設計士さんは戸惑うばかりです。それ以前に、作っている本人も訳がわからなくなってしまうはずです。

テレビや雑誌で良いと評判のものが、自分たちの生活に合うかは別問題ですし、友人にすすめられたものをそのまま書きこむのも×です。

変えられないもの、変えたくないもの、受け継ぐもの、そして日々抱えている生活の問題点などは、個々の生活で異なるものであり、自分たちにしか分からないものなんです。

それらを書き加えておくことがとても大事なことであり、自分の言葉で表現することが大切なんです。



ここでひとつ助言しておきます。

「イメージノート」づくりで意外に多いのが、みなさんがお金がかかると勝手に思い込んでしまって、初めから書くことを止めてしまうことです。

みなさんが思っているイメージは、実際多額のお金がかかることかもしれませんが、実はお金をかけずに、または少額で、はたまた今あるものを使って、それらに近いことが実現できるかもしれません。

あれこれ工夫したり、経験に裏打ちされた技で、お客様が描く「自分たちの新しい生活」に近づいていくことが、設計をする人間にとっての腕の見せどころであり、プロとしての仕事なんです。

ですので設計士さんをどんどん利用して、たくさん悩ませてあげましょう!

ただ、間違わないでください!

お金がかかると勝手に思い込んでいる“イメージ”ですからね、イメージ!

実際に写真に写っている固有のお金がかかるモノ自体は、しっかりそのままの値段がかかりますからね。設計士さんがそれを買ってくれるわけじゃないですから(笑)。

さぁ、今度こそ、あなたも「イメージノート」をつくってみませんか?


『間取りの博士』の教え:第7話
 ☞ リビングは四角くスッキリがいい?


※プロローグでお断りさせて頂きましたが、現在では女性蔑視・差別表現とされている「ご主人」「旦那」「奥様」という呼称が登場しています。ジェンダー・ニュートラルな「パートナー」や「つれあい」という言葉では文脈上誰を指すのかわかりにくく、また公的な場で「夫」「妻」を他人が呼ぶ呼称が未だ定着していないことから、便宜上「ご主人」「旦那」「奥様」という呼称を使用しています。


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