営業マンは見た!

住まいづくり『プロと博士の教え』 第6話

住まいづくり『プロと博士の教え』

~『営業のプロ』の教え ~

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営業マンは見た!

(ピンポ~ン♪)(ガチャ!)

営業マン
「こんにちは、○○ホームの△△ですが、今日は展示場へのご来場のお礼でお伺いいたしました。」

奥様
「わざわざすいませんね、ただ立ち寄っただけだったなのに…」

営業マン
「いえいえ、昨日は弊社の展示場をご覧いただきまして、本当にありがとうございました。ご覧になられていかがでしたか? 少しは参考になりましたか?」

奥様
「そうねぇ~、正直言っていっぱいあって、どこがどれだか覚えていなくて」

営業マン
「そうですよね、どこも同じような家ですもんね」

奥様
「そうなのよ~、たしか赤いキッチンがあったように覚えてるんですけど、他には…。みんな洋風の四角い家が多くて、窓がすごく大きくてね!」

営業マン
「そうですよね~、何軒くらい回られたのですか?」

奥様
「そんなでもないんですけど、5~6軒くらいかしら?」

営業マン
「そうですか~、それじゃ~昨日から結構次々と営業マンが来て、ビックリされているんじゃないんですか?」

奥様
「いえ、まだおたくで2人目よ。昨日主人が、電話でどこかの方と話してたかしら…。みなさん大変ですね!」



総合展示場に行ったその日の夜や次の日に、突然営業マンが家に来てビックリ!…、なんて方、多いんじゃないですか?

そうでなくても、お礼の電話がかかってきたり、来場お礼の手紙が届いたり。

今でこそカーナビやGoogleマップなどで、お客様の家がすぐにわかりますが、昔はゼンリンの地図をめくり調べて、地図のコピーを片手に即日訪問したものでした。

この「礼訪」(=お礼の訪問の略)、みなさんはどのように応対されていますか?

営業マンの腰が低くソフトであたりのやわらかい対応に、ついつい無防備に答えていませんか?

この「礼訪」、もちろんお礼の気持ちをこめてお伺いしているのですが、本当の目的はお客様の判別のためで、謂わば「事情聴取」に訪れているのです。

目的はただ一つ、このお客様は営業するに値するかどうか? どのランクにあたるお客様か?を見極めるための訪問なんです。そのために、あらゆる角度からお客様の情報を集めるわけです。

冒頭の会話の中で、あなたは営業マンが何を感じ、どんな情報を収集していると思いますか?

そんなの「自分が2人目の礼訪者で、5~6軒を見て回ったが、どこも同じような家で、自社の家をあまり覚えていないこと」じゃない、な~んて簡単に思っていませんか?

この「礼訪」、実はお客様の情報収集は、ピンポーン♪の前から始まっているんです。

それでは順をおってお話しましょう。



まず、お客様が「どのような環境にお住みなのか?」を見ています。

昔ながらの住宅地なのか? 古い分譲地か? 田舎の一軒家か? 賃貸のアパートや分譲マンションか? それに傾斜や道路幅など、広範囲に及びます。

それに、最寄り駅やバス停、学校や学区、近隣スーパーなどの他、近くに自社他社を問わず建築中の現場があるかどうか? などもチェックし、「潜在的なニーズ」を探ります。

これらは、新しく土地を探して家を検討するのか、建替によるものかの判断や、周りに刺激を受けているかなど、事前情報としていろんなことをインプットできます。

例えば古い分譲地などでは、近くの家が建替えると、意外にそれがキッカケとなり刺激を受けて、「うちもそろそろ考えなきゃなぁ~」となる場合が多いんです。

また賃貸アパートなら土地から探しているケースが考えられますし、分譲マンションなら住み替えも視野に入ってきます。

次に、「今のお住まいの状況」です。家の所有者と表札の名字の相違などにより、借家か持ち家かを推測し、築何年位か? 何階建てか? 日当たりや生活騒音は? 区画整理や立ち退きに引っかかっていないか? パッと見の家の大きさや痛み具合、リフォームの有無? など、目に入る情報は、すべてインプットされます。

これは建替えのニーズや、現居より感じられる、家に対する「お客様の考え方」などを探っています。



そして「所有するクルマ」です。

何台所有しているか? どんなクルマに乗っているのか? 色や見た目のオプション品などまでチェックします。

台数は家族構成を知るヒントになり、それ以上にどのようなクルマに乗っているかが、大きなヒントになります。

最近でこそワンボックス車が多くなりましたが、クルマには「ご主人の性格」や「ご夫婦の考え方」がよく現れるものです。

一般的なファミリーで、ミニバンに乗っているなんていうのは普通ですが、例えばGTーRやロードスターに乗っている…なんていうのは、ご主人のクルマ好きやこだわりが感じられます。

また、一等地の豪華な家のカーポートに、軽自動車が1台だけとか、逆に老朽化した賃貸アパートにアウディが駐まっていたり…と、そんなギャップにも敏感です。

かつては、白のカローラやマークⅡに乗っていると、多くはご主人の80点主義(突出したものは無いがすべてが合格点)の表れなどとも言われましたが、今はそれ程でもないでしょう。でもプリウスやリーフに乗る方は、要チェックでしょう。

クルマは一般的には2番目に高い買い物ですから、家の購入にあたっての「モノの価値観」を知る上で重要なヒントが隠されているんです。

昔はよくホンダ車を所有する方に注目していました。今でこそ軽やミニバンメーカーになってしまいましたが、SONYと同じように、ホンダ車が好きな方には、どこか同じ傾向がありました。

また、クルマの色やルーフキャリア・アルミホイールなどのオプション品、それに洗車などのお手入れ状況なども、重要なヒントになります。

何の気なしに駐めているクルマですが、よくよく見ると所有者のことが結構分かるものなんですよ!

…とまぁ、♪ピンポ~ンとベルを押す前に、お客様とのいろいろな会話を想定して、営業マンはいろんな情報をインプットしているんです。



話は戻りますが、冒頭の会話の「こんにちは」以降ですが、対面している間は、会話中の言葉づかいや表情、視線がどこへいくかで、お客様の「性格」や「家づくりへの関心・真剣度合い」などをみています。

特に、興味がなく早く帰って欲しいと思っている場合などは、目線は下がっていますし、返答が切り上げ調になりますから、余程鈍感な営業マンでない限りすぐにわかります。

特に若い世代の方は、ウザい!と思うとすぐに表情に出る傾向にありますので、ほんの数秒でわかります。

そんな風に会話を続けながら、玄関先の靴の数から家族構成を推測し、突然の訪問でも靴がそろっているか? 散らかっている場合にはドアを開けてから気付いて直すかどうか? 玄関先に荷物がそこらじゅうに積み重なっていないか? 全体的にきれいに整理されている印象か? など、「家族の性格」や「多忙な家族か」などを判断し、さらに置物や家族の写真、ゴルフバック、自転車、ボード…などで、家族の趣味や価値観など、あらゆる「家族の情報」を収集していきます。

突然の訪問ですから、ありのままが見られるわけで、かなりの情報が掴めてしまうわけです。

わたしも自分が営業をしている時は、今話しているようなことを気にかけているのですが、いざ自分の家に突然の訪問者が訪れた際などには、そこまで気が回っていませんから、そう考えると恐ろしいことですよね。

最近では、集配に訪れる宅配便の配達員が、一番家の情報を持っていると言われています。玄関扉を開けなくなった現代においても、宅配便の時は必ず扉を開けますからね。

サービスの向上につれ担当テリトリーが細分化され、集荷と配送の度により密接にみなさんと接するようになり、かなりの情報を持っていると言われています。

家族構成から休みの日、留守の時間帯、購入する商品傾向、決済方法から利用頻度まで、あらゆる情報が宅急便業者には蓄積されています。

みなさんの中にも、配達員の名前を覚えていたり、世間話や冗談を言い合う中になっている人も少なからずいるのではないでしょうか。

さらに怖いのが、「メール便」の配達員です。「これは郵便物ではありません!」という、ポスト投函の配達員です。

あの配達員、単にポストに投げ入れているだけではない人達がいるんです。実は企業のアンケート調査を請け負っていたりするんです。

住宅業界でも利用している会社があり、メール便を届ける時に、表札の家族名? 一軒家かどうか? 築年数? クルマの台数・車種? などの調査を同時にやっていたりします。

どうですか? 少しは「見られている」ことに対して、意識が生まれてきましたか?



では、再び話を冒頭の会話に戻しましょう!

「どこがどれだか覚えてなくて」という奥様の答えを受けて、営業マンは「うちは3階建ての二世帯住宅で、和室の続き間があり、古代檜のお風呂があったところですよ!」などと、必死に思い出してもらおうとはしてはいません。

「そうですよね、どこも同じような家…」と言って、差別化せずに「同じであること」を強調しています。

なぜでしょうか?

普通だったら、「当社の商品は、△△に違いがあって、ここの部分が優れていて…、思い出せましたか?」と、必死に差別化を図るべくアピールするはずです。

なぜ? わざわざ記憶を埋もれさせるような発言をしているのでしょうか?

実はこうすることにより、お客様はもし他と同じでないものを感じていたとするならば、必ずそれを言葉に出して言うからなんです。

言い換えるならば、特別に感じているからこそ、同じような家の中で覚えているわけで、「覚えている」=「興味がある」ことだからです。

それを聞き出すために、わざと「そうですよね、どこも同じ家…」と言っているのです。

またこの答えが多ければ多いほど、「自社に対する興味や関心度」もわかりますし、同時に家づくりに対する「真剣度」も測れます。

ここでは、「キッチン」がキーワードとして残ります。

ちなみに、もし奥様の言った「たしか赤いキッチンがあったように覚えてるんですけど…」が、間違って他社の展示場であったとしても、それはそれでよいわけです。

「キッチン」がキーワードとして残ることには変わりはありませんから。

そして、最後に「競合相手が何社くらいになりそうなのか」を、回った数から予測し、「他社の動き」を礼訪順で確認しているのです。

どうですか? 何の気なしに対応していた、営業マンの恐ろしさが分かってきましたか?

もちろん今回のお話なんかは、ほんのさわりに過ぎません。分かって欲しかったのは、営業マンは冗談を言って笑わせたり、同情したり、軽い雑談をしている時でも、1秒たりともムダな面談をしていないということです。

その場でメモったり、改まって一つ一つ聞いたりしなくても、アンテナを張り巡らせ、個々の情報を結びつけながら、より多くの情報を掴んでいくのです。

ということで、今日の教えは、




今日の教え

★「家の顔」に気を払いましょう!

家の前、玄関先、勝手口、カーポート、庭先などに注意を払い、日頃からそこに住む人物像が現れていることを意識してください。

そのうえで、

★営業マンは見ている!「笑顔の裏に、刑事の顔」

ということを意識しましょう。

どんな状況であれ、ムダに時を過ごす営業マンはいません。ソフトでやわらかく包み込む応対の裏で、どんな些細な情報でも漏らさず聞き出そうと、あの手この手でゆさぶりをかけてきます。

もちろんお客様は犯人(笑)じゃありませんから、危害を加えることはありません。

ただ、今後商談が進むとすると、営業マンばかりがこちらの情報を握って行くことは、商談時に立場が弱く営業の掌で転がされる危険性が高まって行きます。

ですので、ここは逆に、

★営業マンへの個人的な質問で、その人間性をチェック!

することをおススメします。

不意の質問に人間性が現れるのは、お客様も営業マンも同じです。営業マンが一瞬ひるむような、個人的な質問で反応を見てみましょう。

例えば、

「毎月何棟くらい売るの?」

「今まで何棟売られたんですか?」

「ノルマはあるの?」

「遅くて大変ね~、デートとかできないでしょ?」

あたりですかね~、嫌な質問は。

もちろん全員がそうではありませんが、こんな質問は、上司に言われているような気がして嫌でしょうね~。おそらく繕うのに苦労する営業マンが多いのではないでしょうか。

特に今月の成約数に関しては、住宅セールスは年間4~10棟くらいの成約数の営業マンが多く、必ずしも毎月コンスタントに売っているとは限らないため、ゼロとは口にしづらく、そんな時に人間性が垣間見えたりすると思います。

とにかく困った時の営業マン泣かせの言葉でもありますので、今後のためにも覚えておいてください。ある意味究極の「殺し文句」ですよ!

まぁ全体的に、日頃は聞いたり聞かされることばかりで、聞かれることには慣れていないため、総じて戸惑う営業マンが多いはずです。


どうですか? だんだん営業マンのことがわかってきましたか?

これまでいろいろとお届けしてきましたが、とにかく敵(=営業マン)を知ってください!

どういう人たちで、どういうことを考えているのか? なぜこんなことを言い、こんな行動をとるのか? を理解することが、商談を有利にし、損をしないためには絶対に必要なことです。

ビジネスの世界では当たり前のことですが、自分がプライベートなお客様の立場になると、なかなか出来ない方が多いようです。

そうそう、いきなり今回「刑事」という言葉が出てきて、不思議に思われたでしょうが、実は、わたしが駆け出しの営業マンだったころ、ある先輩に言われたことがありました。

★「住宅の営業マンはデカだよ!」

って。そう「刑事」です。 今だと誰を連想したらいいのかわかりませんが、わたしの世代だと、水谷豊さんよりも舘ひろしさんのイメージに近いですかね(笑)。

心理戦や事情聴取を行い、アンテナを張り巡らせ、カンを働かせあらゆることを推測して、ホシ(=お客様)の動きをキャッチし、すかさずアクションを起こす。そして何より絶対にホシを逃がさない! 必ず捕まえホシを挙げる(=契約する)ってね。

かなりお客様に失礼なお話ですが、ある面なるほどなぁ~と感心しました。もちろん今でも的確な表現だと思っています。

そして、新人時代に今でこそ個人情報の問題から、なかなか難しくなりましたが、つくづく「俺は刑事だなぁ~」と思ったことがありました。

こんなことまでするのかよ!…と。

そのお話は、次回のお楽しみ!


営業のプロ』の教え:第7話
 ☞ 俺は刑事か?


※プロローグでお断りさせて頂きましたが、現在では女性蔑視・差別表現とされている「ご主人」「旦那」「奥様」という呼称が登場しています。ジェンダー・ニュートラルな「パートナー」や「つれあい」という言葉では文脈上誰を指すのかわかりにくく、また公的な場で「夫」「妻」を他人が呼ぶ呼称が未だ定着していないことから、便宜上「ご主人」「旦那」「奥様」という呼称を使用しています。


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