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河内温泉

河内温泉に宿泊するならこの宿！

金谷旅館

千人風呂 金谷旅館

河内温泉と聞くと大阪の温泉？と思ってしまうのだが、静岡県人でも河内温泉の名を知る人は少ないと思う。だが "金谷旅館" "千人風呂" と聞けばピンとくる方が多いわけで、一般的にはこちらの方が広く知られている。

そんな河内温泉へは、伊豆急行の蓮台寺駅の駅舎を出て、真っ直ぐに稲生沢川を渡り国道414号を横切り、突き当りのT字路を左に折れれば辿り着く。駅から歩いて4分程の距離で、通りの右手に『金谷旅館』が見えてくるので、誰でも迷うことはないだろう。

『金谷旅館』は、2000坪という広大な敷地に金谷山をバックに緑に埋もれるように佇む一軒宿で、昭和時代の1929年に建てられた本館がレトロな雰囲気が醸し出している。創業は実に江戸から明治へと大きく時代が変わろうとしていた幕末の1867年で、大政奉還を見届けるかのように坂本龍馬が暗殺された年だ。

それから修繕改築を繰り返しながら、5つの時代を乗り越え令和の時代にこの地で営業を続けているのだから、まさに伊豆の名物旅館と言える。

そんな『金谷旅館』を伊豆の名物旅館に押し上げたのが、"伊豆の名物となるようなお風呂を造りたい！"という思いから大正時代の1915年に誕生した、日本一の総檜風呂となる混浴の「千人風呂」だ。この宿を語るのに多くの言葉はいらないだろう。上の写真がすべてであり、とにかくこの一枚の湯舟の写真だけで多くの人を魅了し、この旅館へと足を運ばせている。

このサイズの温泉プールは全国にちょこちょこあるが、総檜造りの巨大な湯舟となるとレアな訳で、20m×5mで深さ1mとまさにプールのような総檜風呂だ。

そういう私もこの歴史を感じる巨大な湯舟に惹かれ訪れた一人であり、説明抜きにそれだけで訪れてみたいと思った一人である。余計な先入観無しに「千人風呂」に飛び込んでみてほしい…と切に思う。

それと湯舟で泳ぐことはいけないことだが、他に利用者がいない時や迷惑のかからない範囲でこっそり泳いでみてほしい。大の大人が童心に帰ってそうしたくなるほど、魅力的な湯舟なのだ。

また混浴と言っても女性の方はバスタオル着用可で、しかも女性専用の脱衣室より鍵を持って入る形となっているので、是非ともチャレンジしてみてほしい。「千人風呂」抜きには『金谷旅館』は語れないので…。

ただどうしても…という方のために、平成時代の1991年に、今度は"女湯の名湯を造りたい！"の一心で、法師温泉のような感じの格子状の婦人大浴場「万葉の湯」が誕生した。

女性専用風呂ということで私は利用したことがないが、約11m×5mと「千人風呂」には敵わないまでも巨大な湯舟となっていて、こちらを目当てに訪れる女性客も増えているようだ。

この他、『金谷旅館』で一番歴史のある明治末期に造られ銭箱に一銭を投げ入れ利用されたことからその名がついた貸切風呂の「一銭湯」や、男女別の打たせ湯がある「露天風呂」もある。

今執筆していてふと思ったが、真っ先に内湯を紹介し、おまけのように露天風呂が一番魅力が無い書き方をした宿は珍しい。内湯はおろか貸切風呂よりも話題性の無い露天風呂は、初めてかもしれない。

誤解の無いように書いておくが、露天風呂が悪い訳ではない。一般的な温泉旅館に比べたら広くて立派な造りをしており満足ゆくものだったが、こと『金谷旅館』においてはそれも霞んでしまうのだ。

また私が初めて訪れた昭和期に比べ源泉利用の方法も変わっているため、泉温もpH値もやや下がっているのだが、これもの『金谷旅館』においてはナンセンスだろう。

老朽化が目立つだの設備がどうの廊下を歩く音が…など、レトロな建築物の雰囲気を求めつつ、不条理にもホテルのような要求をするクチコミもあるが、この宿は「千人風呂」に惹かれこの湯舟に浸かることだけを夢見て訪れる人だけに泊ってみてほしいと切に願う。

河内温泉『金谷旅館』はそういう宿であり、「千人風呂」にはそれらを凌駕し余りある魅力あふれる温泉なのだ。

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