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大涌谷温泉

大涌谷温泉に宿泊するならこの宿！

箱根 漣-Ren-

箱根 漣-Ren-

はじめに言っておくが、なんで仙石原温泉の宿がここに…とお思いの方もいるだろうが、上記のように、大涌谷温泉は源泉名であり、大涌谷周辺を大涌谷温泉と呼ぶこともあるが、所謂温泉地としての大涌谷温泉はない。

通常大涌谷温泉は、箱根温泉供給株式会社が供給している蒸気造成混合泉を指し、1号～3号で若干泉質が異なるものの、これが箱根温泉荘の別荘地や強羅温泉・仙石原温泉の湯宿に引湯されている訳で、感覚的には大涌谷温泉≒仙石原温泉といった感じだ。

仙石原の至高の温泉宿である『箱根 漣-Ren-』も、2つある湯の一つが大涌谷温泉の引湯となっているので、ここでご紹介するに至った訳だ。

『箱根 漣-Ren-』は、スマホやナビがある時代なので問題ないが、一昔前なら思わず通り過ぎてしまいそうなくらい、看板も控えめで周囲に溶け込み佇んでいる。駐車場こそ広々と取られているものの、その存在を消すかのように生い茂る森の中にひっそりと佇むその姿は、まるで銀座の裏通りの看板の無い隠れ家的名店のようだ。

そんな『漣-Ren-』の室内空間に"贅"はない。余分な装飾や色づかいを排した「シンプル イズ ベスト」を掲げる某住宅メーカーのモデルハウスのような空間が広がっている。ゆったりとした空間が贅沢と言えば贅沢なのだが、過度な装飾や無駄なライン・配色は見られない。

日常から解き放たれた客室ではあるものの、無理に非日常的な空間演出は行わず、森の中のプライベート別荘を訪れているかのような、自然体な客室空間が生まれている。殿様気分になれる雅な造りの部屋も時には面白いが、個人的にはこちらの方が落ち着く感じだ。

お風呂は、内風呂が大涌谷温泉のにごり湯である「酸性－カルシウム－硫酸塩･塩化物泉」で、露天風呂が仙石原温泉の「カルシウム－硫酸塩泉」となっている。大涌谷からの蒸気造成混合泉の引湯だけの宿が仙石原には多い中、2つの泉質が楽しめるのは嬉しい限りだ。

そしてここの魅力はなんと言っても"オーベルジュ"、宿泊施設を備えたレストランという美食家も唸るお料理だ。日本人が素直に美味しいと感じる、日本人の味覚に合ったフランス料理を提供することをテーマに掲げており、どうやらこの宿の非日常は食のようで、食の魔法にかかる宿という訳だ。

一品一品手は込んでいるが、素材を殺さず全面に出した料理が登場するわけで、四季の味を捉え、"旬"を逃がさない食材選びもこれまた素晴らしい。完全無農薬のオーガニックにこだわったビオワインも評判のようだ。

鮮度抜群のみずみずしい地元野菜をはじめ地産地消にこだわりを見せる中、個人的に嬉しかったのは、地元静岡のあしたか牛や桜えび、沼津港の魚介類なども季節により登場することだ。

正直和食一辺倒の私には、ここで目にする料理の数々は最も遠い世界であり、恥ずかしながら"CUISINE NATURELLE"（キュイジーヌ・ナチュレール）という言葉すらチンプンカンプンだった訳だが、和であれ洋であれその素材に対する考え方は両手を挙げて共感できるものであり、自然食材の素晴らしさを存分に活かした身体にやさしいこのフレンチは、やはり魔法の料理のようだ。

ところでこの宿の『漣-Ren-』という名は、訪れる人が「さざなみ」のように、寄せては返し、また寄せる、そんな場所でありたい…というオーナーの強い思いが籠められ名付けられたという。

2005年のクリスマス前に創業して以来十数年が経った今、まさにそのような至高の温泉宿になっているのではないか…、私にはそう思える。

そんな『漣-Ren-』が、絶頂期の2023年に突然閉業した。未だに信じられないのだが、今後どうなるのか様子をみたい気持ちもあり、しばらくこのまま１位としておく…。

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