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姥子温泉

姥子温泉に宿泊するならこの宿！

料亭旅館 いちい亭

料亭旅館 いちい亭

古より愛された美しい箱根外輪山の山並みを借景とした、窓の外のどこか懐かしい庭の景色に、なんだろう…、例えようもない安らぎというか居心地の良さを感じる。

目の前の景色に特別なものは何一つないのだが、生い立ちのせいか私には古き良き昭和の時の流れがここに感じられ、妙に心が落ち着く。そんな心持ちにさせてくれる宿が、ここ『料亭旅館 いちい亭』だ。

玄関から畳敷きという和の空間が館内に広がっており、抹茶でのお出迎えから始まる心づくしのおもてなしもなかなか感じが良い。この空間に数寄屋風の和室が5部屋と洋室のスイートからなる全6室だけということも、実に贅沢なことであり、きめ細やかなサービスにもつながっている。

ただ欲を言えば、和室がもう少し削ぎ落され洗練されていれば数寄屋建築だったのに…とちょこっと思ったりする訳だが、全くもって個人的な意見だ。

何よりこの宿の魅力は、料亭旅館を掲げるだけあって、四季折々の旬の食材を活かした料理にあり、多くの方がそこに惹かれて訪れるわけだ。その料理はというと、日本の伝統的な料理技法に基づき、全てを手作業で行うというこだわり様で、味覚や視覚だけでなく五感で味わう本格懐石が魅力のようだ。

ようだ…としたのは、このクラスになると毎度のことながら育ちが出てしまう訳で、私にはすべてが素晴らしく感じてしまうので、全く参考にならないことを申し訳なく思うのだが、素人目にも色彩豊かな料理の技は本当に凄いと感じるわけで、器や盛付も楽しめる。こちらの方は、是非訪れて皆さんの目で確かめて欲しい。

そして額縁で切り取られた四季の景色を、古代檜の浴槽から眺められる半露天風呂の貸切風呂がこれまたよさげな訳で、ここに注がれているのが、無色透明の単純温泉の"姥子の湯"だ。

箱根の温泉宿は、引湯により宿の所在地とその源泉地が必ずしも一致しないケースが多く、この姥子温泉もしかりで、箱根ロープウェイや箱根海賊船のりばに近い芦ノ湖畔の宿もあれば、この宿のように仙石原のど真ん中に位置する宿もある。

引湯と所在地の2つの源泉両方の湯が楽しめる宿はまだよいのだが、この宿のようにそうでない場合には「どうしたものか…」と、いつも掲載時に悩む。

一般的には源泉地とエリアは同じ事が多く、宿の所在地で温泉地を分けることが多い。箱根十七湯も、17中12ヵ所が地名とリンクしていることから、源泉分けというよりもエリア分けのニュアンスが強い。

この宿も所在地は仙石原なので、仙石原温泉に括る宿泊サイトの方が多い訳だが、この宿に注がれているお湯は"姥子の湯"なので、姥子温泉が楽しめる宿として姥子温泉とした方が正しいように私は思う。

ただ宿探しをしている皆さんからすれば、仙石原温泉のエリアにポツンと姥子温泉の宿があると紛らわしい訳で、特に源泉地や泉質など気にしない方からすれば、宿の立地で括っ方がわかりやすい気もしてとても悩む。私もそうだが、旅行代理店や雑誌編集者の方も頭を抱えているのだろう。

説明ついでに言えば、源泉名と台帳記載の源泉番号名は異なることが多く、台帳には源泉が掘られた当時の地名が記載されていることから、塔之沢温泉は台帳では「湯本」だったり、大平台温泉・宮ノ下温泉・底倉温泉・小涌谷温泉は同じ「温泉村」だったり、木賀温泉が「宮城野」だったりとさらに紛らわしい。元箱根温泉が、ある日を境に芦ノ湖温泉と蛸川温泉になったのもそんなことからだ。

ともあれ『料亭旅館 いちい亭』で楽しめるのは"姥子の湯"である。それは間違いない。

そんな『料亭旅館 いちい亭』の「いちい」は、イチイの木があることから名付けられたそうだが、イチイの名の由来は、飛騨のイチイより高位の神官の笏を作ったことから、仁徳天皇がこの木に対して正一位の位を授けたとする説や、イチイの鮮やかな赤い材質が一番の緋色だということから、一緋＝イチイとなったとする説などがある。

後者も位袍で言えば、一位～三位の紫に次ぐ位階の色となるので、いずれにしても上位で高貴なイメージがする訳で、そんなイメージを裏切らない、その名に違わぬ素晴らしい温泉宿に育ったのが『料亭旅館 いちい亭』だ。少なくとも私の姥子温泉での評価は一位だ！

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