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水上温泉郷

水上温泉郷に宿泊するならこの宿！

蛍雪の宿 尚文

蛍雪の宿 尚文

なんなんだろう、この宿は。とても不思議な感じに包まれる宿だ。「蛍雪の宿 尚文」という宿名からして、気になってしまう。

"蛍雪"と言えば『蛍雪の功』で知られるように、中国の『史書』に登場する言葉だ。貧しい境遇から努力をして高官にまで上り詰めた、車胤と孫康の物語に由来する言葉だが、夜中勉学に励もうにも貧しさのあまり灯りが無かった車胤は、ホタルを集め灯りとし、一方の孫康は、窓の外に雪を積み上げ灯りにしたという。

並々ならぬ苦労をして学問に励むという意味の言葉だが、それを冠する宿とはどんな宿なんだろう…と、いつもはあまり気にしない所まで特別な想いを巡らせてしまう、いや自然とそうなってしまうような、そんな不思議な力を持つ宿だ。

湯上がりにデッキテラスで自然の風に触れながら、夜空の星を眺めたり、虫の声に耳を傾けたり、澄んだ空気の下、のどかな田舎の休日を満喫できる宿…と、いつもならそのようなことを書いているのだが、もはやこの宿においてはそれらは当たり前のことのように感じられ、その先の感覚にとらわれてしまうのだ。

館内の造りにしてもそうである。机や椅子、欄間や引き戸など、どれもこれも一つ一つに特別感はないのだが、不思議なセンスが光る。

これが「INAKAスィート」になると極まる感じで、流木の様な不思議な天然木や湯舟の何気ないアール、自然な感じの壁材や調度品までが不思議な調和を見せ、素晴らしい空間を作り上げている。そこには贅は無く、だからといって数寄屋のようなそぎ落としも無く、さらりとした中に不思議なセンスが光っているのである。

みなかみ米や自家製味噌を使い、奥利根の山菜や利根川の岩魚など地元食材にこだわった「山人料理の田舎宿」と称しているが、目に見えてカタチになるまで日々あれこれ試行や研究を重ね、常に良くなろうと上を目指す、この宿の目に見えぬ努力は相当なものがあるのではないか…と、思ってしまうのである。

見た目は田舎の温泉宿だが、そこにあるこの不思議な感覚を抱かせるこの宿の怖ろしさと言うか底力というか、ここに"蛍雪"を見る感じがする。

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