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義仲寺 Vol . 103 義仲寺(滋賀県)
      ‐ Shiga ‐
義仲寺 滋賀
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義仲寺 関連】
木曽義仲―「朝日将軍」と称えられた源氏の豪将 旭のぼる―木曽義仲の生涯
芭蕉―その鑑賞と批評 えんぴつの旅・松尾芭蕉 野ざらし紀行
知る人ぞ知る、そのお寺の名は?
 
琵琶湖」湖畔の滋賀県大津市の街中の一角に、ひっそりと佇むひとつのお寺があります。
 
義仲寺山門立派なお堂があるわけでもなく、国宝級の仏像が眠るわけでもないこのお寺。
 
まして五重塔や広い境内に美しい伽藍配置を見せるなどということもなく、特に春の桜や秋の紅葉が有名というわけでもありません。
 
およそお寺というイメージからは程遠い、通りからは、一見ただの民家のようにさえ見える素朴な佇まいをみせるこのお寺こそ、知る人ぞ知る史跡、『義仲寺』 (ぎちゅうじ)です。
 
一般の方にはなかなか馴染みの薄いお寺の名前かもしれませんが、このお寺の境内には、日本の歴史のひのき舞台にも登場した、いくつかの伝説が静かに眠っています。
 
お世辞にも決して広いとはいえない境内いっぱいに、まるで箱庭のごとく、さまざまな時代を生き抜いた今も語り継がれる歴史上の人物の足跡が、ぎっしりと詰め込まれています。
 
 
 
街に埋もれていった、義仲寺!
 
義仲寺は、読めない駅名でも有名な、JR東海道線の膳所駅(ぜぜえき)から、ほんの400mくらいの旧東海道沿いに、街に埋もれるようにひっそりと建っています。
 
義仲寺境内にある木曾八幡社かつて、大津駅、馬場駅などの名称で親しまれていたこの膳所駅周辺は、時代とともに巨大なショッピングセンターが建ち並ぶ、人通りの絶えない大津でも有数の市街地と姿を変えました。
 
古くは、「粟津ヶ原」(あわづがはら)と呼ばれ、琵琶湖に面した景勝地でもあったこの義仲寺一帯ですが、現在は湖面からは遠ざかり、周囲に建物が建ち並んだこともあり、直接琵琶湖を望むことが出来なくなり、市街地開発の中、いつしか埋もれるていくこととなりました。
 
そんな義仲寺の縁起は、その名が示すとおり、源平の合戦の最中、彗星のごとく現れ、彗星のごとく歴史の舞台から去っていった一人の人物、一般には広く、「木曾義仲」の名で知られている、「源義仲」(みなもとのよしなか)公からきています。
 
そして、この名を冠していることが、このお寺の歴史そのものを物語っています。
 
 
 
彗星のごとく時代を駆け抜けた、木曾義仲!
 
木曾義仲は、自らを「朝日将軍」と名乗り、天下にその名を知らしめました。
 
義仲寺境内にある木曾義仲公の墓源平合戦の折、後に鎌倉幕府を開いた「源頼朝」(みなもとのよりとも)に先んじて入京し、力づくで「征夷大将軍」の地位を勝ち取り、自らが源氏の大将として振舞ったことにより、やがて源頼朝率いる鎌倉方と、骨肉の争いを演じることとなりました。
 
京で育った頼朝に対し、田舎育ちで教養や公家のしきたりに暗かった木曾義仲は、京の治安維持に失敗したこともあり、やがて朝廷からも見放され追い込まれていきました。
 
そして迎えた1184年、木曾義仲は、「宇治川の戦い」にて、「範頼」(のりより)・「義経」(よしつね)率いる頼朝軍に破れたのをキッカケに失墜し、1月20日、この粟津ヶ原の地にて果てました。
 
彗星のごとく時代を駆け抜けた義仲は、この地にて31年の壮絶な生涯を閉じることとなりました。
 
 
 
義仲の菩提を弔う尼僧とは?
 
その後、いつしかひとりの尼僧が、「徳音院義山宣公」と名を変えた、義仲の菩提を弔って通うようになり、やがて近くに草庵を設け供養するまでとなりました。
 
義仲寺境内にある巴塚この尼僧こそ、男勝りの武勇で知られ、常に義仲に付き従った側室の「巴御前」(ともえごぜん)だったとされています。
 
巴御前の死後、この草庵は「無名庵」「巴寺」などと呼ばれていきましたが、義仲公より「木曾寺」、そして「義仲寺」とも言われるようになりました。
 
その後、300年の時が流れ、室町時代末期1553年、当時近江の守護職にあった「佐々木氏」が、「石山寺」参詣の折、荒廃したこの義仲寺を目にし、同じ源氏の流れを汲む者として、ひどく心を痛めたといいます。
 
そして、この寺は、そんな佐々木氏の手によって再興したと伝えられています。
 
 
 
木曾殿と 背中合わせの 寒さかな
 
あまりにも早く、あまりにも華々しく散ったこの義仲の人生でしたが、義仲の死後500年近くの年月が経った頃、ひとりの人物が、この義仲の生き様につよく共感を覚えていました。
 
義仲寺境内にある芭蕉の墓その人物こそ、日本人なら知らない人はいないと言われるくらい有名な俳人、「松尾芭蕉」でした。
 
奥の細道」の旅路を終えた芭蕉は、上方滞在中や、故郷伊賀上野への旅路の折に、幾たびかこの地を訪れ、義仲寺の庵にて、身近なものと楽しい時を過ごしたとされています。
 
そんな芭蕉でしたが、1694年10月12日、大阪の花屋仁右衛門宅で病に倒れ、辞世の句、「旅に病で 夢は枯野を かけ廻る」を残し、永眠の床につきました。
 
かねがね自分が亡き後は、「骸(から)は木曽塚に送るべし」と言い渡してあったその言葉通りに、芭蕉の亡骸は、「向井去来」(むかいきょらい)や「宝井其角」(たからいきかく)ら門人10人の手により、近江へと運ばれ、この義仲寺にて葬儀埋葬されました。
 
芭蕉がどのような想いで、この義仲という人物に共感していったのかは?ですが、日本中を歩き回り、様々な史跡や歴史上の人物に触れていった芭蕉が、この木曾義仲という人物に心を寄せ、この地を選んだということは、とても興味深く思えます。
 
生前に、庵を訪ねた門人「島崎又玄」(しまざきゆうげん)が詠んだ、「木曾殿と 背中合わせの 寒さかな」の一句が、この芭蕉の想いを物語っているようにも思えます。
 
 
 
芭蕉への想い・・
 
翁堂内の額わたしは芭蕉という人物について、特別明るいわけではありません。
 
しかしながら、東北を中心に、旅先で出会った芭蕉の足跡の数々に触れる度に、いつしか日本を代表するこの俳人が気になるようになりました。
 
奥の細道を巡った時にも、芭蕉の故郷、伊賀の地を訪れ、「俳聖殿」(はいせいでん)や「芭蕉の生家」、「蓑虫庵」(みのむしあん)などを訪れた際にも、同じような想いが巡りました。
翁堂内の芭蕉像 
そして、この義仲寺で、芭蕉の墓を目にして、ますますこの芭蕉という人物が気になってきました。
 
いつも質素な装いで、日の当たる場所にありながら自らはちょっと影に隠れた存在となるこの人物が、なぜこの地を選び、この地で永遠の眠りについたのか・・・。
 
この答えは、今の自分にはわかりません。
 
この先も、未来永劫その答えは導き出せないのかもしれません。
 
しかしながら、何年か先、またいつか、この義仲寺を訪れ、芭蕉翁の墓を目の当たりにした時に、再び問いかけてみたいと思います。
 
 
 
箱庭のような楽しさ・・
 
この義仲寺の境内には、「義仲公の墓」、「巴塚」、「芭蕉翁の墓」の他に、本堂となる「朝日堂」や芭蕉の宿舎でもあった「無名庵」、芭蕉を奉る「翁堂」、「粟津文庫」、「木曾八幡社」、そして、「古池や 蛙飛び込む 水の音」の句碑など、たくさんの見所があります。
 
義仲寺境内にある無名庵また、山門右手の旧東海道沿いには、地元の方々に広く慕われている、巴御前を追福する、「巴地蔵堂」があります。
 
冒頭でも申し上げましたように、お世辞にも広いとはいえないこの義仲寺境内に、びっしりと詰め込まれた感のあるこれらの史跡の数々を、こまめに見てまわるこの感覚は、まるで箱庭を楽しむかのような趣で、他のお寺では、なかなか味わえないような、そんな楽しさがあります。
 
そんな義仲寺ですが、毎年、1月には「義仲忌」が、5月には、芭蕉の像に白扇を捧げる「奉扇会」が、10月には、芭蕉を偲ぶ「時雨忌」が執り行われます。

この義仲寺は、旅行ガイドに華々しく登場したり、観光客でごった返すような場所ではありません。
 
旅行の楽しみでもある視覚に訴えるような光景とは、およそこの義仲寺は程遠い存在でもあります。
 
しかしながら、テレビや書物で木曾義仲の活躍を目にする時、旅先で見つけた芭蕉の足跡に出会う時、この義仲寺のことが思い出されます。
 
義仲寺境内志半ばで、非業の死を遂げた木曾義仲、同じく志半ばで、旅路で病に倒れた松尾芭蕉、そんな歴史上有名な二人の人物の生き様に、少しでも迫りたい・・・、そう思う方だけに、この義仲寺はおすすめします。
 
自宅の庭の草木を、ひとつひとつゆっくりと見てまわる様な、そんな面持ちで、境内を巡ってみてください。
 
きっと何か、心に通じるものがあるはずですよ。
 
 
  
 
■ 義仲寺 〜 星★聖 の ひとこと 〜
木曾義仲と松尾芭蕉、二人の人物像に迫りたい方は、「義仲寺」に訪れてみてください!
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